石井あゆみ「信長協奏曲」
漫画は絵柄じゃない。そして同時に漫画は絵柄である。そう痛感させられる作品です。掲載紙で一見して読み飛ばしたりしていたのだが…改めて読んでみるとこれが実に面白い。全体ににじみ出るこの風格…なんつうの?昭和…?てっきりどこかの大御所が描いているのかと思っていたら、1985年生まれのほぼ新人といっていい方でした。意外すぎる…。そして慣れてくるとこの絵柄でなければダメなんだよなあと思わせられるのがすごい。
あらすじとしては「タイムスリップした高校生が信長にそっくりで、入れ替わって信長として生きる」という…あれ?…やっぱり昭和?というような角川映画かと見紛うばかりの設定で、まあ史実に沿ってお話も進むのに、そんなある種奇をてらわないフレームの中で、キャラクターの魅力でこれだけぐいぐいと読ませるのか、と。今どき珍しく主人公の魅力で引っぱることの出来る漫画で、物語の面白さはやはりその主人公のキャラクターに負うところが大きいものの、脇を固めるキャラクターの魅力もまたこの作品をぐっと力強くしている。まずはおいっちゃん(信長の妹)が最高。もうぜんぜんかわいいはずはない見栄えなのに、果てしなく可愛らしくみえてしまう。そして犬千代(前田利家)な。きょとんとしてノリのよい若者ふうで、利家といえば花の慶次の印象が強く、次いでへうげものの不可思議さであるから、たいそう好感を持った。こわもてだがどこかひょうきんで哀しい道三もいい…。あとはすごく嫌な感じだが秀吉のキャラクターも効いている…。いずれにせよ、ありふれたモチーフでよくぞここまで読ませるなあ、と。登場人物が皆、イキイキと生きている。王道とは、こういう漫画のことをいうのかも知れませんね。小難しいことなしで楽しめる珠玉のエンターテイメント。漫画好きだけど絵柄を選ぶ人にこそ、あえて読んでみて欲しい。現在三巻まで刊行中。
ナタリーでの担当編集者の談話が以下に。
- 2010/09/21登録
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コメント (5)
2011/01/05
Rume 読んでますよー。私は竹千代、鯛で食中毒フラグに笑いました。結構ひとがしんでるはずなのに、まったくといっていいほど頓着せずのほほんと戦国の世を渡ってる感じが良いです。ふつうなら、人を殺すのに悩みまくるエピソードなどが入って鬱陶しくなりそうなのに。
紙飛行機 あ、そうか。あれ、食中毒フラグだったのかー。家康の死因なんてうっかり忘れていたから気づきませんでした。人死にでうう~ん…となるのはじいの時くらいですし、それもさらっとしてましたねー。エンターテイメントとしてそこを切り捨てるのもなんか昭和っぽい笑
2011/01/06
Rume たしかに、戦国自衛隊などをおもいださせますな。プレ・エヴァンゲリオン角川系?
2011/02/19
ニジ 4巻出たところでようやっと読みました。とても面白かったです。紙飛行機さんのKWも非常に的を射たものであるなあ、と感心しました。キャラクターも展開も現代っ子(笑)ぽいですよね。絵はレトロ調なのに。もう一人のタイムスリッパーなんてもっと満を持して登場するかと思った。続きが楽しみです。
紙飛行機 まいどありがとうございます。言われてみれば確かに、もっと佳境で出てきてもおかしくなかったですね、タイムスリッパー。そうでなくとももうちょっと重大な人物がそうだったりとか…。でも結果的にはあそこにタイムスリッパーを置いたのは意外でよかったです。僕も「天狗の子」を…と思いつつ、いつも本屋に行くところっと忘れることが続いております。10巻とかまでふくれあがる前になんとかしないと…。
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