INAX BOOKLET 鳥かご・虫かご 風流と美のかたち
谷崎潤一郎の『春琴抄』に、盲目の三味線師匠春琴が
溺愛していた鶯の鳥かごについて、
こんな描写があります。
鶯は人の見ている前では鳴かない
籠を飼桶という桐の箱に入れ障子を嵌めて密閉し
紙の外からほんのり明かりがさすようにする
此の飼桶の障子には紫檀黒檀などを用いて精巧な彫刻を
施したり或いは蝶貝を鏤め蒔絵を描いたりして
趣向を凝らし中には骨董品などもあって
今日でも百円二百円五百円などと云うのが珍しくない
天鼓の飼桶は支那から舶載したという一品が嵌っていた
骨は紫檀で作られ腰に瑯坩の翡翠の板が入れてあり
それへ細々と山水楼閣の彫りが施してあった
誠に高雅なものであった。
ウグイス・メジロなどの小鳥のさえずりを競わせる
「鳴き合わせ」は、明治・大正期に
最盛期を迎えたのだとか。
『春琴抄』は明治初期のお話ですから、
その辺りのことを踏まえてあるのでしょう。
この鳥籠の描写が春琴のキャラクターとも重なって、
強烈な印象を残し、
小鳥と共に愛玩の対象となっていたこんな鳥籠を、
是非一度見てみたいと思っていたのでした。
それを心ゆくまで堪能させてくれたのがこれ。
INAX出版は、建築・デザイン関係の書籍を
たくさん出していて、どうやらギャラリーもあるらしい。
そのギャラリーで開かれた展覧会をもとに
刊行されているのが、この小冊子。
銀座のギャラリーでは現代美術の展覧会も
しているようですね。
このBOOKLETは、毎回一つのキーワードを多角的に
分析していて、その切り口の多さにまず驚かされます。
この号でも古今東西の鳥かご・虫かごについて
動物学、昆虫学はもちろん、建築史、日本近世史、
芸術学、中国文学など、様々な分野の人たちが、
語っています。
当然、写真にもホレボレ。
他に気になるのは「月」「傘」「靴」などなど。
出版部に問い合わせて在庫切れの場合は、
本屋さんの建築関係の棚を探した方が早いかも。
鳥籠にまつわる思い出をもう一つ。
以前、バイト先の近所にボロイを通り越して
レトロな風格すら漂う大衆食堂があった。
たまーにお昼を食べに行っていたその食堂の軒先には、
竹ひご製の鳥籠が置いてあった。
けばけばしいネオンと端正な鳥籠がアンバランスで、
気になって仕様がない。
パチンコ屋の轟音に混じって鳥の声が聞こえるので、
どうやら中身がいるようだ。
何の鳥か気になって仕様がない。
色々と気になって仕様がないので、ある日、
カウンターで髭を剃っている親父に聞いてみた。
「軒先の小鳥は何ていうんですか?」
「ムィィィィ~ン…メジロ。」
「あの鳥籠すごく素敵ですね。」
「ムィィィィ~ン…そう?」
「どんな所に置いてあるんですか?」
「ムィィィィ~ン…小鳥屋。」
「そうですか…。ごちそう様でした。」
「また来て。」
しばらく通いましたね。
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コメント (8)
最新コメント5件
2003/02/11
眠子 りらんさんへ:大阪のINAXギャラリーって四ツ橋でしたっけ??チェックはしてるんですけど、まだ行ったことないんですよねえ。大阪って行くのに気合がいるんですよね…。京都より近いのにな。そうそう、確かに今回のは地味でしたよね。何だったか思い出せないです。やっぱりアート系の書店でしょうかねえ。「靴」と「階段」探してるんですけど、見つかんないんです。。。
りらん お探しの本、もし見かけたらご一報します(笑)。めじろはたいていツガイでびゅーんと飛んでますよ。めちゃかわいい。あの色も良い良い。
眠子 わー、うれしいです!是非是非!めじろ可愛いですよねぇ。今職場で蝋梅が満開で、よく止まりに来てます。色合いがぴったんこでたまんないです。
2003/02/13
祥 ありました、本(六本木・あおい書店)。素敵だけど分量的にこの値段はビンボー人にはちょっとキツイ...この位でなきゃ作れないんでしょうけどね。でもチェック出来る楽しみが増えました。鳥篭の展覧会は見たかった。あ、バックナンバーもありましたが「靴」と「階段」はなかったです。*めじろ、大好きです。あの色、食べたくなっちゃう(うぐいす餅じゃないんだから)。
2003/02/15
眠子 そうなんですよね、ちょっとお値段がねえ。私もどーしても欲しいときだけ買ってます。メジロは確かにぱくっと食べてしまいたい。あの色がたまんないです。
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