コンナトキドウスル リンショウ ノ ナカノトイ
こんなときどうする? ―― 臨床のなかの問い
朝日新聞 2010年10月17日に掲載された 斎藤環(精神科医)氏の書評を読んで、本書を知った。
全三部から成る医療現場の呟きである。
第一部は、著者が臨床で直面した全18種の「難渋する症例」に対する分類ノートである。
本書のサブタイトル「臨床のなか問い」の通り、けして「答え」を綴っているわけではない。
著者が、過去から現在においても臨床の中で避けて通れない「難渋」をそのまま吐露している。
単なる医療エッセイとは一線を画したほうが良さそうなくだりも多い。
ちなみに、ワタシはこの本を出張からの帰路、飛行機の中で読み始めたのだが、衆目の中、不覚にも涙を隠せないまま、一気に読み終えてしまった。
Ⅰ. こんなときどうする?―「野の花診療所」の難渋分類
1.大きな腫瘍
2.大声
3.メモする家族
4.自死
5.キャラ
6.受容の受容
7.アロディニア
8.変わる意志
9.死の場の変更
10.心のう波
11.ディスコミ
12.タバコ
13.「シナシテ」
14.急変
15.心マッサージ
16.訴訟
17.骨依頼
18.宗教
第二部は、ホスピスの患者さんを中心に、「精神科の視点」で「人間の精神、心」を綴った臨床の素描である。
24の症例とともに著者の臨床における思索が素直に語られる全51章。
Ⅱ.がんと心―精神科医療の扉
1.人の心
2.がん末期の心の臨床
3.症例から考える
:
7.死の時の心を支えるもの
8.「がんばる」という心境
:
11.〈わがまま〉の力
:
18.知的障害の力
:
36.統合失調症の人とがん
:
42.精神病になる仕組み、ならない仕組み
43.『死刑囚の記録』再読
:
51.コミュニケーション
第三部は、…
Ⅲ. 臨床で哲学と出会う―一人ひとり違う
1.流動する哲学の場
2.キュアとケアの図
3.○と×の哲学―臨床は刻々と変わる
4.十三の和語たち
5.医療と時間
注目したのは「4.十三の和語たち」。
本章では、医療の現場で使われる欧米語による「用語」への違和感を訴えている。
すなわち、「インフォームド・コンセントや、リビング・ウィルや、クオリティ・オブ・ライフ、そうした用語」は「人間を見る目、人間に対する倫理的な思い」としては洋の東西を問わず同様であろう、と。
そこで著者は、「生命倫理」に纏わる用語を「和語」で表現してみようと試みたのである。
一、たっとぶ
二、いつくしむ
三、さする
四、はぐくむ
五、つつしむ
六、ひらく
七、わらう
八、とまどう
九、あやある
十、ゆるしあう
十一、いのる
十二、ほろびる
十三、ユイマール(沖縄の言葉で「結い」の意)
これらについて、冒頭の書評では、立川談志の持論「人間の業の肯定」に通じる味わいがあると評している。
「人間というものの業、知性でも理性でもどうにもならないもの、世間では“よくない”といわれているもの。それらを肯定し、寄席という空間で演じられてきたのが落語である。」(立川談志)
同感である。
- 商品名: こんなときどうする?――臨床のなかの問い
- 価格: ¥1,995
- 著者: 徳永 進
- 出版社: 岩波書店
- 発売日: 2010-07-30
-
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- 2010/10/29登録
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コメント (5)
2010/10/29
rinrin- 気になる本ですね。
ネコまいける rinrin- さま、コメントありがとうございます。
この手の本を買って帰ると、妻(看護師)に先に読まれてしまいます。
今回は出張先から家に帰る前に読了しましたが…。
2010/10/31
秋津 明日から入院します。たいした病気ではないのですが。私はどのように考えるか、自分でも楽しみでもあり・・・です
2010/11/01
ネコまいける 秋津 さま コメントありがとうございます。 ケア(看護)する立場、キュア(治療)する立場、そして、その両者(治療と看護)を受ける患者の立場。 それぞれが重要な意味ある「立場」にいるのだ思います。 どれが一つかけてもコミュニケーションは成り立たないと思うのです。 相手の立場で考えてみることで、新しい視野が開けることもあるのでは…、と常々思ったりします。 入院されるとの由、どうかお元気になられた時のコメントをお待ちしております。
rinrin- 秋津さま 入院、人生において変容を余儀なくされる出来事ですよね。患者さんという立場は弱いものだと考えますが、人生の一環として時間が有効にすぎる事を祈っています。お大事にして下さい。
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