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死刑囚の記録 (中公新書 (565))

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『こんなときどうする? ―― 臨床のなかの問い』 徳永進・著の中に、

「『死刑囚の記録』再読」

という章がある。
末期を迎えた患者の心理と死刑囚の心理を考えるのがテーマだ。

『死刑囚の記録』は、徳永氏同様、ワタシも30年前に読んだきりだったので、この際、再読してみた。

本書は、著者の加賀乙彦氏が東京拘置所等で医官として従事した際に接した死刑囚に関するドキュメントである。

初めて読んだ頃は、20歳代であり、社会科学の研究生だったこともあり、死刑制度(国家権力による殺人?)や冤罪事件の知識として読んだ記憶がある。

その頃、最も印象的だったくだりは、以下のような一節だ。

「拘置所、それは国家が在監者を拘禁し、戒護し、厳格な紀律にしたがわせる場所である。
在監者の側からいえば、時空に渡っての、あらゆる自由が制限されるところである。
囚人に残された最後の自由、生きることまでもが制限されているのが死刑確定者なのである。」

当時、ワタシが若かった頃は、制度や権力へのアンチテーゼを中心に捉えていたように思えるのだが、30年以上を歴て読み返してみると、多少、自身の視点が変わっていることに気がつく。


例えば、今はこんな件(くだり)の方に興味がいくのだ。

「ドストエフスキイは『死の家の記録』のなかで、シベリアの流刑囚の生活について
「十年間の徒刑生活のあいだに、一分一刻もただひとり切りになれないということが、どんなに恐ろしく悩ましいものであるか」
と嘆いている。確かに、東京拘置所でも、そう言えた。」


これは、ワタシ自身が、長い一人暮らしの末、結婚生活に入った頃の気持ちに似ている。
一人暮らしは、孤独のように思えるが、ある意味「自由」でもある。
しかし、結婚は、支えあう者との共同生活であるが、ある程度の「自由」は犠牲にしなければならない。

結婚と「拘禁」状態を同じ次元で考えるのは早計であることは言うまでもないのだが、本書では、社会的な動物である人間が、被疑者の段階であっても「拘禁」状態になることによって、一気に「精神病(拘禁ノイローゼ)」に至ることが明示されている。

さらに、この精神症状は、
「死刑が確定する前の重罪被告」、
「死刑が確定した死刑囚」、
「死刑ではない無期受刑囚」において、
明らかに違った様相を見せることにも言及している。

また、本書が出版されてから30年以上が経った今、「拘禁ノイローゼ」に近い精神状態、いわゆる「爆発」、ないし「キレる」精神状態を持つ人たちが、拘置所に限らず、社会の至る所で見られるようになった。

街を歩けば、ほとんど全ての会社員が首からICカードぶら下げ、ケータイを見つめており、四六時中、「イマ、ドコ、ナニシテル?」と、お互いの行動を交信し合っている。
さらに、「引きこもり」と言いながら、ドコカのダレかとネットでつながっていたりする。
これらは、謂わば「漠然とした拘禁」状態なのかもしれない。

既に、社会そのものが、何者かの監視下におかれ「拘置所」化しているということなのだろうか?

本書には、リアルな「拘禁」状態が凝縮されている。


目次は以下の通り。

第一章 ある殺人者との出会い
第二章 東京拘置所ゼロ番区
第三章 独房の現実と夢
第四章 刹那主義の人びと
第五章 冤罪を主張する人たち
第六章 鉄窓の宗教者
第七章 死刑囚と無期囚




死刑囚の記録 (中公新書 (565))

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ネコまいける
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  • 商品名: 死刑囚の記録 (中公新書 (565))
  • 価格: ¥714
  • 著者: 加賀 乙彦
  • 出版社: 中央公論新社
  • 発売日: 1980-01
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  • 2010/10/29登録
  • 2417クリック

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コメント (3)

2010/10/31

フロム なるほど、今の人がぴりぴりしてるのも拘置されてるせいなのもかも知れませんね。

2010/11/01

ネコまいける フロム さま コメントありがとうございます。 ジョージ・オーウェルの『1984』における管理社会も、村上春樹の『1Q84』の世界も根底に流れる思想の潮流は同じような気がします。

2010/11/11

フロム 春樹は文庫化待ちですけど。オーウェルの方は怖いですよね。でもよくよく考えると今の日本の方がオーウェルが想定している世界よりもはるかに狡猾なのかもしれませんね。

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