リリイ・シュシュのすべて
僕が最も好きな映画のひとつ。
そういうと性格が疑われそうだが、事実そうであるから仕方がない。僕はきっと性格が悪い。
世間の評価はとっても低い。
非常に残酷だし、人々に多く求められる種類の映画ではない。実際僕は好きな女の子に勧めるのをためらった。
上の僕の考え方の構造のもつ悲しさ、そういったものをこの映画は描いている。この映画の悲劇は人々がレッテルを張り合うことから産まれている。そして産まれる悲劇は、この世の中で最悪のものである。でもそれで思考が停止したら(いや普通するけど)この映画を理解することは困難になると思う。
主人公は追詰められた状況の中で、リリイ・シュシュが歌う歌だけが救いなのだけれど、彼以外からみればその歌は非常に凡庸で、つまらないものだ。だけど彼にとってはその歌だけが救いなのだ。
放課後音楽室から聞こえてくるドビュッシーはけして、最高に美しいものではない。だけど彼にとっては、それが最高に美しいのだ。
他のもっと良いものを選ぶことだってできるかもしれない。しかしそれを選んでしまったら、今ある関係(例えば、音楽→救い)が壊れてしまう。浅田彰はこれを貧しい、と言っていた(と思う)。この種の貧しさは現代の日本の至るところに散らばっている。それって僕はすごく悲しい。でもどうしようもない。そのどうしようもなさをこの映画は見事に描ききっている。
- 2001年10月6日公開
- (監督・脚本)岩井俊二
- (撮影)篠田昇
- (音楽)小林武史
- (出演)市原隼人、忍成修吾他
- 2003/03/07更新
- 2003/03/07登録
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