イギ-・アンド・ザ・ストゥージズ / ロー・パワー
IGGY AND THE STOOGES / RAW POWER
73年作品。リスナーに聴く聴かないの選択肢という余地を全く与えさせない圧巻の暴力的なサウンド、ライヴで出てくる他のバンドの息の根を止めてしまうプリミティヴなパフォーマンス、生きる伝説イギ-・ポップが残した、音楽の歴史上最も素晴らしい作品の一つがこのアルバム『ロー・パワー』である。
そのキャリアをドラマーというポジションからはじめたイギ-・ポップはドアーズやMC5というミュージシャンから触発され、ヴォーカルに転向しストゥージズを結成。69年『THE STOOGES』(プロデュース:ジョン・ケイル)でデビューを果たしたが、全くヒットや世間一般のロックはかけ離れた存在にあった。彼曰く「ダンスフロアで皆のひとときを和ませるような、素敵な音楽でもなかったし、アリーナの聴衆を前にライヴが出来るほど商業的な成功をしたわけでもない。」とのこと。だが、イギ-は「本当に音楽にのめり込んでいるヤツだったら、俺達に興味を示すはずだってことは判っていた。」という。
セカンド『FUN HOUSE』(70)でさらに孤高の音楽を作ったストゥージズに全く理解できなかったレコード会社エレクトラは契約の打ち切りを告げ、不仲となったバンドは解散した。だが、イギ-の音楽・存在に興味を抱いていた、かのデヴィッド・ボウイとト二-・デフリーズはデトロイドに出向き、イギ-へのコンタクトを図り、様々な提案を試みる。デトロイドでニューバンドを作っても先など見えていたイギーはこの話に乗り、条件としてストゥージズの復活を挙げた。『ロー・パワー』はこれまでと同様イギ-が全てを掌握した状態でレコーディングされ、一切ボウイらに口を挟ませなかったという。
ミックスでボウイが絡んだことも相まって、アルバムはそこそこの注目を浴びた。だが、聴いたものはそこそこの反応なんて言葉がでないほどのとんでもない衝撃を喰らったのだ。
”サーチ・アンド・デストロイ”(#01)で吐き出される荒々しい憎悪の塊は続く”ギミー・チェンジャー”(#02)への今あるものの価値への完全否定に繋がる。反体制主義などにも反抗する生粋の完全自己主義は「パンク」という言葉で語られ(音楽をパンクと表現されたのは彼らがはじめて)、一部の人を除き、誰も彼らの思想や姿勢には着いてこられなかった。ラヴ&ピース、モダン、ヒッピー、どこにも属さない個の存在は”アイ・二-ド・サムバディ”(#06)というシンプルなナンバーに表現されているとおり、今聴いてもまだ怒りの消えていない原始的な叫びを有していたのだ。
UKで怒涛のパンク・ムーヴメントが巻き起こったのはここから5年後のことで、あらゆる意味で彼らは早すぎた。常軌を逸した彼らの行動は広く愛されることもなく、コマーシャルになどなりえるはずも無かった。そしてバンドとイギ-は限界のレベルに達し、イギ-のドラックによる長期入院から再びバンドの解散へと繋がっていくのだ。
その後80年代にボウイとのタッグで鮮やかな復活を遂げたイギ-は現在もなおカウンター・カルチャーとしてシーンに生き残りつづけている。生きている化石のごとく強靭な肉体と、何物にも変えがたい精神を宿って、正気ではない音楽を表現しているのだ。
なお、アルバムは97年にイギ-の手によりリマスターされ、現代のサウンドプロダクトによるイカレタ音楽となり復活している。どちらも聴き逃すことは出来ない音楽ジャンキー必須アイテムなので、お忘れなく。
- 価格: 1942円
- メーカー: ソニー・レコーズ
- 年(代): 1973年
- 団体名: イギ-・アンド・ザ・ストゥージズ
- 2003/03/09更新
- 2003/03/09登録
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