関心空間はブックのクチコミも満載!

新着

... もっとみる
ログイン | ユーザー登録(無料)

アマルティア・セン 『ケイザイカイハツトジユウ』

アマルティア・セン 『経済開発と自由』

  • アマルティア・セン 『経済開発と自由』の画像

ハイエク、バーリンらの自由至上主義派は、人間の活動を妨げる制約要因を除去するような「消極的自由」に関心を集中した。しかしセンにおいては、そのケーパビリティーの理論の中で、基本活動(センの言うところの機能)の組み合わせの幅を広げることを人間の根底に据え、「積極的自由」を重要視することからはじめた。


センの思想の根底をなす考えがケーパビリティー論だが、その基礎としてエンタイトルメントという考え方がある。エンタイトルメントとは、すべての人間が、ある社会の成員として原初的に所有する権利から獲得されうる財サービスへのアクセスを指している。また、人々は互いのエンタイトルメントを交換し合うことによって自らの厚生を高めていく。


『貧困と飢饉』(sen1981)でも述べられているように、エンタイトルメントは人権を保障する物的基盤を指す概念だが、ある人々の権力行使によって、他者にとっては自らのエンタイトルメントが失われ、貧困や飢饉が起こることがある。よって、ある人間にとってのエンタイトルメント情況は、その人間の基本活動を決めることになるということができる。


人間の基本的活動(機能)は、十分な栄養を取ること、早死を防ぐこと、適切な医療を受けられることという生に関する基本的な諸活動から、自尊心を持ったり、幸福であったりという、より複雑な活動までを含むが、センは、これらの諸活動の組み合わせを選択していくことによって、人間の能力(capability)が明らかになってくるという点を重要視している。


ケーパビリティーとは、人間が基本活動の選択を通じて、さまざまな可能な生の間に選択を行っていくことである(=潜在能力)。すなわち、ここで語られる自由とは、結果としての自由のみならず、よりよい生活を追及していく自由を表現していく力にほかならない。


そしてこのことから、人間とは俗にいう福祉(基本財や資源の入手度、実質所得など)や効用を追及するだけの存在ではなく、自分自身の価値を形成していく主体(agency)としてとらえることができるのである。


センの思想は、ベンサム的功利=効用主義の一般均衡理論を、「協定と契約」という観点から批判し、コミットメント(共感)という概念を提起する。また、人間は自己利益のみならず同時にコミットメントにも依存しているという考え(ケーパビリティーの一部)は、基本財の配分としての格差原理というロールズの「正義の二原理」を批判する。


また、センのケーパビリティー論を踏まえた自由の概念は、開発の議論において(内容に関する詳しい議論は別として)GNP増大という指標に対抗するHDI(人間開発指数)HPI(人間貧困指数)の創設における基礎となった。これは既存の厚生や福祉の考え方(限界効用の均等化、一人あたりのGNP)では計りきれない部分を補う、UNDPが行った90年以降の新しい試みである。


このようにセンの思想は、市場のみを対象とする既存の経済学から脱却を図り、広範囲な人間活動に焦点をあてる。これは人間の主観的効用の充足、極大化という従来の経済学の考え方から、ケーパビリテウィーの拡大によるよりよい生の充足へと価値観を転換させているのである。


今日、センの個人におけるケーパビリィー議論を基に、民衆参加における参加型開発、市民社会などをどのように築いていくことができるかが問題となっている。すなわち個人におけるケーパビリティーの概念を、どのように社会に対して反映させていくかが問われているのである。


開発の現場の、それぞれの社会性、歴史性、人間関係をもった文化において、このケーパビリティーの考えを前提条件とし、ともにどのような開発を行っていくのか。現地の人間との係わり合いの中でいかに社会を築き組織していくのか。このような政策的課題はさまざまなケーススタディーのなかでその手法が検証されている。この問題は援助する側、援助を受ける側双方にいえる問題であり、ケーパビリティーの概念を自立的な開発に生かしていくためにはどうすればいいのかという実践的プロセスである。


個人の自由とはそれを保証する社会の構築があって初めて成立する。ケーパビリティーの理論に根ざした社会を構築するにはどのような方法をとるのが有効なのか。この問題はさまざまな土地の開発の現場で、現在もなお模索されているといっていいだろう。 


*HDI(人間開発指数) UNDP

構成要素 

1.平均余命 

2.教育普及度 

3.所得水準


*HPI(人間貧困指数) UNDP

構成要素 

1.生存:40才未満で死亡するであろう人の割合

2.非識字率

3.人並みの生活水準

a)保健医療サービスを利用できない人の割合
b)安全な水を利用できない人の割合
c)5才未満の栄養失調児の割合

アマルティア・セン 『経済開発と自由』

このページに
携帯でアクセス

2次元バーコード対応の携帯で読み取ってください

ワタナbシンゴ画像 投稿者:
ワタナbシンゴ
  • 2003/03/12更新
  • 2003/03/12登録
  • 17070クリック

このキーワードを共有する

つながりキーワード (1)

「福祉社会と社会保障改革―ベーシック・インカム構想の新地平」2002年の本です。 Amazonでレビューがなくて残念でした。 商品の詳細では・・・ 「20世紀型「福祉...

キャンペーン


ロケットニュース24

未来検索 ガジェット通信
ページの先頭へ ページの先頭へ