ディ アワーズ (めぐりあうじかんたち)
THE HOURS (めぐり合う時間たち)
“素晴らしくよくできた映画”
だ。
この映画は神経を研ぎ澄まして見る映画だったので、夜中にも関わらず頭の中がグルグルと回転した。奥深く見ようとするほど、溢れるものが沢山あった。一言でいうと、この映画は「Emotional」な映画である。
どういった「Emotion」かというと、女性の生理前の情緒が不安定な時のようなあの感情だ。だから、男性にはちょっとツライかもしれないが、監督が男性なのに驚いた。
『監督』
Stephen Daldryはとてもいい監督だと思う。まず、あの、3人の大女優と味のある素晴らしい脇役者たち(エド・ハリスやトニ・コレット)を見事に動かしている。それから、最近のハリウッドにお決まりのカメラワークで遊んでみるようなことはせず、クラシカルなやり方で、花やゴミ箱や卵の殻など無機質なものをを映しながら、人の内情をカメラに出している。そしてそれは、とても分かりやすく表現されている。
それから、音の効果もすばらしかった。メリル・ストリープが娘と寝室のベッドに横たわりながら話しているときに、本当にかすかに、時計の時を刻む音がカチカチ聞こえる。それは、私が普通にベッドに寝ているときに聞くように自然に馴染んだ音なのだ。(多分集中しなければ、聞き逃すがも知れないけれど)それが、ドアのベルで激しく中断される。とても、意味がある音。う、うまい。
一言一言重みのある舞台の緻密な脚本を読んでいる気分になった。
そう、これは、監督の意図だけでなく、脚本家の腕でもあると思うけれど。
『原作/脚本』
原作はMichael Cunningham
脚本はとDavid Hareという人。
話の構成が面白い。3つの話が時空を超えてつながる。
1923年の小説家のバージニア・ウルフ(ニコール・キッドマン)
1951年の普通の主婦、ローラ(ジュリアン・ムーア)
2002年のキャリアのある女性クラリッサ(メリル・ストリープ)
この3人が上手い具合に絡まって、つながっている。タネあかしになってしまうので、これ以上は書けないけれども、なにしろ、3人のたった1日生活の時の中で、跡形もなくきれいに上手くおさまっています。
『俳優/キャスティング』
キャスティングが、ちょっとひねっていて、意外性があって面白い。
普通のキャスティングだったら、
バージニア・ウルフをメリル・ストリープが演じて、
普通の主婦をニコール・キッドマン、
キャリアウーマンをジュリアン・ムーアでまとめていると思う。
が、これは、全く意外なキャスティング。役者の観点から言って、一番難しいのはやはりバージニア・ウルフ、次に主婦、次にキャリアウーマンだと思う。なぜかというと、バージニア・ウルフは書くということに自分の感情を表現しているから、実際の生活であまり感情を表さない。主婦は、バージニアと同様、言葉などで感情を表さないが、突発的な行動で示している。そして、キャリアウーマンは、現代人の女性らしく、つまりながらも、自分の感情を人に伝えている。これは、年代と共に女性が開放されているということも、上手く伝えているのだけれど、そういうことも、考慮すると、やはり、バージニア・ウルフが一番難しいと思う。そして、そのバージニアを演技で定評のあるメリル・ストリープでなくニコール・キッドマンが演じるというのも挑戦的だ。この3人の女性、映画を見るほど肌の色や鼻が似ているというのも、キャスティングの上手さだと思う。
ニコール・キッドマンが一目で彼女と分からないのは、偽の鼻をつけているからなのだ。彼女が、もし、アカデミーを逃すとしたら、それは鼻のせいだという人がいる。確かにそうも感じるが、やはり、あの役をこなすことが出来たのは、鼻のせいだけでなく、彼女の演技力だと思う。そして、あえて挑戦したことに相当の勇気がいったに違いない。
ジュリアン・ムーアも上手い。「羊たちの沈黙」のジュディ・フォスターの後釜で出ていた時は幻滅したが、今回は、違う。上手い。見ていただければ分かると思う。
メリル・ストリープも今までの映画になく上手い。ここまでのキャリアをみると、今までの演技と一線を置くのは、やはり、彼女の努力はもとより、監督の力量だと思う。
脇役で、目をひくのはエド・ハリス。いままでの、強くて安定したような役柄とは全く違う。触れたら壊れそうな役で出演している。メリル・ストリープとのコンビネーションもいい。うまく、彼女を引き立てつつ、彼も光っていたと思う。
トニ・コレット。彼女もいい。最初は、なんだ、勢いだけか?と思うけれど、あとのマッチの火が消えるようなそいういう演技が素晴らしい。
そして、突然また発火する。感情の起伏を彼女のメジャーでうまく出していると思う。
ひとまず、見てくださいと、それしか、今のところ言えません。見るときは、手で布を一針一針縫うように、じっくり見るといいと思います。疲れるけれども、疲れるのがもったいなくないくらい、いい映画だと思います。今のハリウッドには、こういった、映画が必要なのかもしれないなぁとも思いました。
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