futurismo / italian futurism / イタリア未来派
1909年2月20日フランス・パリ発「フィガロ」紙にて
「未来派宣言」
わたしはイギリスを情熱的に愛するイタリアの未来派の詩人である。わ
たしはイギリスの芸術を病気のなかで最も重い病気である過去主義から治し
たいと思う。それゆえわたしは、大声で、遠回しな表現でなく語り、わたし
の友人でイギリスの未来派の画家ネヴィンソンとともに、戦いの合図を送る
あらゆる権利をもっている。
われわれは次のことに反対する。
1. 伝統の崇拝。アカデミーの保守主義。イギリスの芸術家たちの商業的関
心。純粋にまたもっぱら装飾的な意味における彼らの芸術と彼らの努力の惰
弱さ。
2. 気取った、控えめな、緩和された、凡庸なすべてのものを愚かにも陶然
と礼賛するイギリスの大衆の悲観主義的な、懐疑主義的な、懐古主義的趣味
。みすぼらしい中世的再構成。卑しい庭園都市、五月柱、モリス踊り、妖精
物語、耽美主義、オスカー・ワイルド、ラッファエッロ前派主義者、新ルネ
サンス前派主義者、およびパリ。
3. イギリス人のあらゆる大胆さや独創性や発明の才を無視し軽蔑し、外国
のあらゆる大胆さやあらゆる独創性を急いで崇拝するまずく運河を造ったス
ノビズム。イギリスは詩においてシェイクスピアやスウィンバーンのような
、絵画においてターナーや(印象派運動やバルビゾン派の最初の創始者であ
った)コンスタブルのような、科学においてワットやスティーヴンソンやダ
ーウィンのような、革新者をもったことを忘れるべきではない。
4. ロイヤル・アカデミーの威信を無くさせ、今やそれ自身前衛的運動に粗
野に敵対しているニュー・イングリッシュ・アート・クラブの偽革命家たち。
5. 芸術に対する王や国家や政治家たちの無関心。
6. 芸術は女性たちや令嬢方にとってだけ良い無益な気晴らしであり、一方
芸術家たちは保護すべきあわれな変人であり、芸術は誰もがそれについて語
りうる奇妙な病気であるというイギリス的考え方。
7. 芸術に関して議論し判断する普遍的な権利。
8. 酔っぱらって、きたならしく、だらしない身なりをして、並外れた天才
という古いグロテスクな理想。芸術の同義語である大酒を飲むという習慣。
ロンドンのモンマルトルであるチェルシー。ソンブレロをかぶり長い髪の毛
をして紅を薄く塗った連中。および他の過去主義的な穢らわしい連中。
9. 君たちに情愛が欠けていることや人生におけるさまざまな感情を補うた
めに(君たちは間違っている)君たちの絵にしみ込ませる感傷主義。
10. 疲労や幸せや絶望によって阻止された革新者。彼らの島や彼らのオア
シスの中に居座った革新者。彼らはふたたび行進することを拒む。「そう、
われわれは新しいものを欲する。だが君らの新しいものを欲するのではない
」と言う革新者。「われわれは後期印象派を賛美し追随する。だが望んだ無
垢さを越えてはいかない(ゴーギャン、など)これらの革新者たちは停止し
てしまったのみならず、芸術の発展を理解しなかったことを示している。も
しひとがぜひとも無垢なるものや、デフォルマシオンや、アルカイスムを絵
画や彫刻において造ったならば、未来派的絵画の造型的ダイナミズムへとさ
らに前進する前に、アカデミックなものや優美なものから乱暴に解放される
ことが必要だからであった。
11. 不滅妄想。傑作はその著者とともに消え去らなければならない。芸術
における不滅は汚名である。イタリアの芸術の祖先たちは彼らの構成能力と
彼らの不滅性でもってわれわれを臆病や模倣や剽窃の牢獄のなかに閉じこめ
た。彼らはいつも尊敬すべき祖父たちのひじ掛け椅子に坐って現存し、われ
われに命令する。彼らの大理石の顔はいつもわれわれ若者にとって苦悩とし
てのしかかっている。「息子たちよ自動車を避けなさい。服を着なさい。風
の通るところを避けなさい。雷に注意しなさい」。
さあ、行っちまえ。----自動車万歳! 風通しのよいこと万歳! 雷万
歳!
われわれは次のことを望む。
1. 強い、男性的な、反感傷主義的な芸術をもつこと。
2. イギリスの芸術家たちは再生的楽観主義でもって、勇敢な冒険欲と英雄
的な探検本能でもって、イギリス人種の力への崇拝と身体的および精神的勇
気でもって、彼らの芸術を強化すべきこと。
3. スポーツは芸術のひとつの本質的要素とみなされるべきこと。
4. 偉大なる未来派的前衛を創造すること。この前衛のみが、アカデミーの
伝統的保守主義によって、また大衆のいつもの無関心によって死の危険にさ
らされているイギリスの芸術を救うことができるだろう。この前衛は興奮を
あたえるアルコールとなり、創造的天才のための激しい刺激となり、長い労
働を避け、浮きかすを絶えず取り除く費用や絶えずふたたび火をともす費用
を避けるために、発明と芸術のかまどに火をともし続ける絶えざる関心とな
るだろう。
豊かで強力な国であるイギリスは、その芸術を確実な死から救おうと望
むなら、もっと革命的でもっと進歩的なその芸術的前衛をぜひとも支持し、
擁護し、賛美すべきであろう。
by フィリッポ・トンマーゾ・マリネッティ
「唸りを上げて走る自動車はサモトラケのニケよりも美しい」
ウンベルト・ボッチョーニ
カルロ・カッラ
ルイジ・ルッソロ
ジャコモ・バッラ
等
filippo tommaso marinetti
umberto boccioni
carlo carra
luigi russolo
giacomo balla
etc
- 2003/03/25更新
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コメント (2)
2004/09/07
0000 ↑これは未来派宣言ではない?
2005/02/02
0000 ■未来派第一宣言
金属や廃液、神々しい煤など工場の廃棄物に顔は汚れ、傷つき、腕には包帯を巻き、しかし何事にもひるむことなく、地上に生きるすべての人々に向かい、われわれの意図の根本をここに宣言する。
1.危険を愛し、つねに活力に満ち、大胆不敵であること。われわれはそうした姿勢をたたえたいと思う
2.われわれの詩の本質は勇気と勇敢さ、そして反抗にある。
3.昨日までの文学は思慮深き不動性、喜悦、そしてまどろみを賛美してきた。われわれは積極的な動き、熱に浮かされた不眠症、疾走、危険な跳躍、平手打ち、拳固をおおいに賞賛するつもりだ。
4.この世界のすばらしさは新たな美、つまりスピードという美によっていっそう豊かになった。排気ガスを噴射する蛇のようなパイプに飾られた競争車、火薬の上を疾駆するように見える競争車は「サモトラケの勝利の女神」像の美に優る
5.われわれは弾み車を握る人間に賛歌を捧げる。その理想的な方向舵は、自らを駆り立てるように軌道上を旋廻する地球を横断する
6.詩人は根源的な原理の熱情をさらに燃え立たせるために、暖かさと輝きをもち、そして惜しみなく力をつくさなければならない
7.戦いの中以外には美は存在しない。攻撃性を欠いた傑作はありえない。詩は未知の力を人間の足元にひきずりだすための暴力的な戦いでなければならない
8.われわれは時代の崖っぷちに立たされている! 不可能性の神秘の扉を打ち壊さなければならないのに、なぜ過去をふりかえるのか? 「時間」も「空間」もともに昨日死滅した。われわれはすでに偏在する永遠のスピードを創造してしまったがゆえに、「絶対」を生きているのである。
9.われわれは戦争を賛美する。世界に真の衛生をもたらす唯一の手段が戦争である。軍国主義、愛国主義、アナーキストの破壊活動、人殺しという美しい思想、そして女性に対する侮蔑をわれわれは賛美する。
10.われわれは美術館、図書館を破壊し、道徳的実践やフェミニズム、すべての功利主義的臆病風に対して闘いを挑む
11.われわれは労働、快楽、反抗に心躍らせて、壮大なミサ曲を歌うだろう。現代都市にわれわれは満艦飾の対位法的な革命を津波のようにひきおこすだろう。武器庫や埠頭はギラギラと輝く電灯という月の下で夜通し振動を続け、貪欲な駅は煙を吐く蛇を貪り食い、工場は排煙という糸によって雲から垂れ下がり、橋は陽当たりの良い河を飛越する巨大な運動選手のように悪魔のナイフのごとくきらめき、冒険好きの蒸気船は水平線の香りに導かれ、鳩胸の蒸気機関車は長いチューブのくつわを嵌め、そして旗のように翻るプロペラと熱狂的な群衆の拍手に送られて飛行機は滑らかに空を行く。
歴史を覆し、伝統に火をかけるであろうこの宣言により、われわれは今日「未来派」をここイタリアに結成する。われわれはイタリアを無数の墓地によっておおいつくす幾多の博物館、美術館から解放するであろう。
博物館、墓地! ……互いになんの関わりもない展示物が数限りなく並ぶ不気味なでたらめさかげんはまったくこの両者に共通するものだ。誰もが利用できる共同寝室で、人は憎しみを抱く相手、あるいはまったく面識もない相手の傍らで永遠の眠りにつく。同じひとつの美術館の中で画家や彫刻家たちは形や色を武器に互いに相手を抹殺しようと凶暴性を剥き出しにする」
※『抽象美術入門』 著:フランク・ウットフォード 訳:木下哲夫 発行:美術出版社 1991
以上です
ある部分で極右的であったり、過剰な過激さも内包しています。少し弁護?するとすれば、それはマリネッティが、より強烈で鮮烈な印象を与えるために(伝統に挑戦するために)、故意に挑発的な文言を選択したためでしょう。これはあくまでも“宣言”ですので、まわりくどい説明ではなく、あくまでも簡潔で明快な言葉、論旨が必要となりますから。また、メッセージというものは過剰さを含んでいないと、伝わりにくいということもあります。
峯村敏明氏は、この宣言について次のように語っています。「マリネッティの巧さは、イタリア復興運動の核心を、『過去主義』の克服という許容性のある論点の上に立てたことである」 峯村敏明 「過去になった未来派の現在」 『美術手帖 1975年3月号 特集 未来派――:現代芸術への道標』 発行:美術出版社 p44
この宣言に触発され、フランスなどと比較して当時後塵をはいしつづけざるをえなかった状況のイタリアで、血気盛んな美術家たちは未来派の旗印のもとに集い、翌年に独自の宣言を声明します。それが以下の「未来派絵画宣言」です。
■未来派絵画宣言
空間はすでに存在しない。雨に濡れた街路の舗道は電灯の眩しい光に照らされて、おそらく深く、ついには地球の中心にまで達する亀裂となる。太陽との間には何千マイルの距離がある。しかしわれわれの眼の前にある家は太陽の光輪とピタリとはまる。
肉体を透視できないといまだに信ずる者がどこにあろう! われわれの感知力はそれだけ鋭さを増し多様化し、肉体というメディアの発するあいまいな兆候の奥深く浸透している。創造活動をおこなうにあたって、われわれの視力は増強されレントゲン写真にも匹敵する能力を得ていることを忘れてはならない。
われわれの議論の正当性を証明するためには、幾千の中からほんのニ、三の例を挙げれば済むだろう。
疾駆するバスに16人の客と乗り合わせたとしよう。この16人は順次、あるいは同時に1人、10人、4人、3人となる。微動だにしないのに、かれらは位置を変える。乗車する者、降車する者、舗道に降り立つや突如として陽光に呑み込まれる者、それがふただびバスに乗り込み、きみの前の席に着く。まるで宇宙の鼓動をたえまなく象徴するようだ。
対話をする相手の頬に、街角を走り抜けてゆく馬の姿を見ることも珍しくない。
ソファに腰をかければ、われわれの身体はソファに浸透し、ソファはわれわれに浸透する。バスは通過する家々の中に走りこみ、また家々はバスの上に身を投げかけて、バスと混じりあう。
絵画の構成はこれまで愚かな伝統にしばられてきた。画家はわれわれの目の前に、オブジェと人物を並べて見せるのが常だった。われわれは今後、鑑賞者を絵の中心に置くことにする。
人の心の内にあるさまざまな領域のすべてにおいて明確な見通しをもつ個人による探究が定説とされてきた不変の闇を吹き払ったように、あらゆるものに精気を呼び覚ます科学の発展は、絵画をも月並みな伝統からまもなく解放することだろう。
われわれはなんとしてもふたたび人生に戻らなければならない。勝ち誇る科学はわれわれの時代の物質的な要求によりよく応えるために過去を捨て去った。芸術も過去を切り捨て、ついにわれわれの内にある知的な要求に応えられるようになるだろう」
「キャンヴァスの上にわれわれが創り出す身振りは、もはや万有のダイナミズムの“瞬間”を切りとったものではなく、それは明快にダイナミックな気分そのものなのだ」 セルジュ・フォーシュロー 「メディアの献立」『美術手帖 1986年12月号 特集 [未来派] 疾走のアヴァンギャルド』 発行:美術出版社 p87
未来派のメンバーはこのほかにも多々の宣言を行います。未来派は、こうした確たる理念があったからこそ、それを具現化する様式を生み出し得たといえるでしょう。しかし、皮肉なことに、彼らが想像していた以上の、次元が全く異なる世界大戦のために、理念も人も散っていってしまったのです。
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