マイノリティ・リポート
ハヤカワの文庫本で読んでも短い短編だけど、よくこうゆう短編から映画を作ろうと思ったものです。目のつけどころがやはり違うのか。スピルバーグ監督に何かピンとくるものがあったのでしょう。
ハヤカワの文庫本から少し引用してみると。
“犯罪予防局”のチーフ、ジョンアンダートン (トム・クルーズ) と、ウイットワーがエレベーターの前で。
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ふたりはエレベーターの前にきた。高速で階下に運ばれるあいだに、アンダートンはいった。
「犯罪予防の方法論がかかえる法律上の基本的な難点は、把握してくれただろうな。なにしろ、まだ犯罪を実行していない人間を逮捕するわけだ」
「しかし、彼らがいずれ犯罪を実行することはたしかです」
ウイットワーは確信ありげに断言した。
「さいわい、彼らは実行しない。こちらが先手を打つからだ。彼らが暴力行為を犯す前に。このため、犯罪そのものが完全な形而上学の問題になる。われわれは彼らが有罪だと主張する。彼らはその逆に、自分らは無罪だと永遠に主張しっづける。たしかに、ある意味で彼らは無罪なんだ」
エレベーターを出て、ふたりは黄色く照らされた廊下を歩きだした。アンダートンは話をつづけた。
「この社会には大きな犯罪はない。しかし、おおぜいの犯罪者候補をかかえた収容所はある」
ドアがひらいて閉じると、そこは分析部の翼棟だった。ぶたりの前方には複雑な装置がずらりと並んでいた。データ受容機、そして、入力されたデータを調べ、再構成するコンビユータ。その装置の列のむこうには、迷路のような配線のなかになかば埋もれて、三人の予知能力者がすわっていた。
「あそこだ」
とアンダートンは皮肉な声でいった。
「彼らをどう思う?」
薄暗がりのなかに三人のプレコグ(予知能力者)がすわって、なにごとかしゃべっている。意味不明の一語一語、つかみどころのない音節が分析され、比較対照され、文字や記号に翻訳され、カードに転写されて、そのカードが分類コードのついたそれぞれのスロットから出てくる。プレコグたちは、一日じゅう、高い背もたれのついた特製の椅子にすわり、金属バンドと配線と留め金でひとつの姿勢に固定されて、うわごとをしゃべりつづけるのだ。彼らの肉体的欧求は自動的にみたされる。彼らには精神的欲求はない。植物人間のように、ぶつぶつつぶやき、まどろみ、生きつづけている。彼らの心はぼんやりとして、とりとめがなく、影のなかに迷いこんでいる。 しかし、その影は現在の影ではない。
もごもごとうわごとをつぶやくこの三人、大きな頭と萎えた体の持ち主は、未来を見ているのだ。
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