ニホンゴノテザワリ
日本語の手ざわり
日本語がどんな特質をもっているのか、日本語にはどれほどの力があるのか?
このことを突き詰める為に、従来の音韻と文法の言語学から離れ、「日本語は漢字と平仮名と片仮名の三つの文字を使う、特異な言語である」という観点から問い直したのがこの本です。所々に筆者の癖のある書き方を感じましたが、漢字、平仮名、片仮名の成り立ちが、歴史上の出来事に沿い丁寧に書かれ、私のような歴史が苦手な者でも理解できました。漢字が中国で生まれ統一されていくまで、そしてどのように日本に流入したか、日本語の話し言葉と書き言葉の漢字がどう照合されていったのかが、とても具体的に書かれています。文字ができたことで「話す」言葉が、明確な語彙と文体を持つようになり、話すことから独立した「書く」言葉が生まれたという論理に立てば、日本語とはどんな言語かを、書き言葉を含めて考えるという主張は説得力がありました。
私はこの年になりお習字を習い始めました。漢字(楷書)からはじめ、つい最近平仮名を書いたとき、先生に「ひらがなはぬるっと入って」と言われました。漢字の一角ごとに、45度きめて入れることに慣れ始めたので、この「ぬるっと」は実に新鮮でした。漢字とは違う呼吸がそこにあることを感じます。この本では、平仮名は「漢字をくずしたものである」ことに加え、「平仮名(その多くですが)は2文字以上連続することで単語、文体をつくるもの」と書かれています。ここで「ぬるっと」という先生の言葉とつながり、なるほどと腑に落ちました。
平仮名が女手と名付けられたのは、女性が使ったからだけでなく、大陸中国で使われた漢字をくずしていった、そこに慎みがあるという筆者の捉え方も、平仮名のもつ柔らかさとか嫋やかな様を的確についているなぁと思います。
筆者の書き方が気になるところも若干はありましたが、日本語の美しさを垣間見ることのできる本でした。
第一章 言葉と文字
第二章 漢字と東アジア
第三章 日本語と文字
第四章 漢字と日本語
第五章 仮名と日本語
第六章 漢字と和語の日本語
第七章 縦書きと日本語
第八章 日本文化と文字
第九章 日本語と文字の行方
石川九楊著
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