Aphex Twin / Selected Ambient Works 85-92
仕事をしていて、歳が若いとか歳を取っているかとか、そんなことはどうでもいいことなのになあ、と僕は思うことがあります。経験が人を育むというのはあるのかもしれませんが、その時どうするかによって価値の全ては決まっていくわけで、その時に年齢の話をすることはどうにも陳腐に感じてしまうからです。そんなとき、例えばエイフェックス・ツインはどうなんだ、と僕はふと語りたくなります。音を鳴らさずにはいられない欲求を中古のローランド100Mで満たそうとした幼少期から、彼は数多のトップ・ミュージシャンと同じレベルで語られる才能を発揮していたのです。そして、21歳の時に発表されたこの作品は現在も尚、テクノ・ミュージックの支柱として君臨しつづけています。アフター・アシッドの境地を感覚のみで辿った密室生活者リチャード・D・ジェイムス。この『アンビエント・ワークス』は僕にとって最高の教科書であり、かつどんな歳でも関係なく素晴らしいものを生み出すことができるのだ、という勇気を与えてくれたのです。
オープニング”Xtal”(#01)は独特のリズムにデトロイド・テクノを湿らせたような触感を与える不思議なナンバー。ダンスフロアにいるぼやけた雰囲気にアシッドなリズムを交えたような”Tha”(#02)。一つ一つ確かめるようにリズムを交え、奇をてらっていないが誰にも思いつかない進行を遂げる”Pulsewidth”(#03)。”Ageispolis”(#04)は創造のふくらみを柔らかいシンフォニーと機械的なリズム・ベースの混在で調べを築いています。続く、”I”(#05)の幻想からすぐに鳴る”Green Calx”(#06)で凍りつかされ、不快感を募らされるものの、”Heliosphan”(#07)では何もなかったかのようにダンスビートと抜きのオーケストレーションに耳を傾けてしまいます。この後、フォロワーが後を絶たなかったクラフトワークの新解釈のような”We are the Music Makers”(#08)、”Schottkey 7th Path”(#09)もその傾向はあります。クラップワークのかわいさと近未来なリズムがもたらす”Ptolemy”(#10)。エレクトリックのミステイクのような”Hedphelym”(#11)。現在も変わらない天邪鬼の原型”Delphium”(#12)は、”Actium”(#13)によって幕を閉じるまでその全貌をわからそうとはしません。
退行と他の音楽に無関心だったリチャードはロンドンに移ってからあらゆる音を吸収し、恐るべきスピードで自分の世界をさらに構築していくことになったわけですが、『アンビエント・ワークス』ではまだその片鱗しか発揮されていません。ある種無垢だったからこそ生まれた傑作であることに間違いはないのでしょう。
現在のエイフェックス・ツインは当時のような素直なアプローチを嫌う傾向があり、複雑化と過剰化の一途を遂げている気がします。しかし、彼は未だに多くのリスナーから愛され、そして次なる新作を待たれています。それはきっと彼が鳴らしたい音楽が存在するのなら、いくつになったとしても変わらない魅力があるということなのでしょう。テクノ・モーツアルトと彼が呼ばれた所以はその若さにあったのではなく、彼の類い稀な才能と、それを発揮しつづける姿勢にあるのだと僕は思います。
- 価格: 2233円
- メーカー: ソニー・レコード(現在廃盤)
- 年(代): 1992年
- 人名: エイフェックス・ツイン
- 2003/04/18更新
- 2003/04/17登録
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