洒脱でキュート。なりよりも日本語が見事。そんな
Mé qué mé qué(メケメケ):美輪明宏
「Mé qué mé qué」(作詞・歌:美輪【丸山】明宏:YouTube)。
2.「Mé qué mé qué:Another version」(〃)
美輪明宏さんを世に知らしめた、この最初のヒット・ソングを聴きつつ、改めてこの方の歌手としての巧さを再認識。というか、美輪さんは、一流のシャンソン歌手なんです。いまは無きシャンソン喫茶・「銀巴里」の専属歌手として一世を風靡。
その美貌と闊達な話術で以後もご活躍なのは、周知のことでしょう。
私なんざ、中学生のころに彼の自伝『紫の履歴書』(1968・初版刊)を読み、その性における侵犯性の、性的マイノリティを生きることの困難がいかほどのものであったか、目を見張った記憶があります(今思うに、果たして15、6の子供に、ここに描かれた美輪さんの生活と精神両面の苦闘のさまの、どれだけを理解できていたかは覚つかないのですが・・・)。
オリジナル曲はジルベール・べコーの作曲、シャルル・アズナブール・作詞で仏蘭西本国でヒットした曲。べコー、アズナブールのご両人もともに各々、独特のスタイルで歌っていたようです。
でもこのなんとも言えぬ洒脱さ。そしてキュートなこと!!。やはり美輪さんのが良し。メロディにぴったりとフィットした歌詞の見事なこと。 なによりも彼の日本語の、くっきりと明瞭なアーティキュレーション(分節)が素晴らしいのです。
でも私は、日本の社会は彼のことをずーっと“色もの”扱い、してきたよな!! って感を拭い去ることはできないのです。で、この後、美輪さんの深い洞察に彩られた歌唱論を引用しておきます。
・・・
(・・・)
アルゼンチン・タンゴは、伴奏よりも四分の一拍ほど、歌のほうが早め早めに出て、途中で思い切って伴奏より遅らせてずらせ、最後のきまりで、きっちりと足並みを揃える。燃えたぎる情熱を抑えながらだんだんと盛り上げて、高音でぶつける瞬間、発音を変える情熱的な歌い方、これがタンゴ。
ジャズは、その反対に、オフ・ビート、オフ・ビートで、伴奏より遅れめに、小節いっぱい、いっぱい伸ばしたりずらしたり、自分のカラーを打ち出しながら、即興的な発想を大事にする。音やリズムを、自分の個性に合ったやり方で作ってゆく。
ラテンは、言葉なしの声だけでメロディを追っていても、ボレロかマンボか、判別できるほどにリズム感を打ち出さなければならない。歌詞がついた場合はなおさらのことである。
シャンソンは、難物中の難物。フランス歌曲の発声に、発音、囁き、語り、絶叫、メロディックな唱法、また、リズムも、ワルツ、タンゴ、ツー・ビート、フォー・ビート、その他ラテンリズム、それらの全てが含まれている。さまざまなジャンルがあり、全くの化け物だ。
(・・・・・・・):「金の鈴」・『紫の履歴書』(新装版・226~229頁より)
・・・・
この後も、まだまだ、彼の非常に知的な分析が続きます。
実際の演奏体験に裏打ちされた、見事な音楽ジャンル論です。現在の歌手のどれだけが、自ら歌う歌について、これほど分析的に語ることができるでしょうか?
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