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隈研吾『反オブジェクト 建築を溶かし、砕く』

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近代建築史をよく知らない私にも近代から現代にかけての建築の流れ(といってもほとんどコルビジェとタウトのことですが)が思想との対比でたいへんわかりやすく書かれています。
コルビジェ、ミース・ファン・デル・ローエらのオブジェクト指向が、20世紀にあらわれたメディア空間の性状を理解し利用した建築手法でもあったという話。
たとえばコルビジェは、自ら設計した建築の白くフラットにデザインしたはずの壁面に、写真上で微妙な陰影やニュアンスが発生する事を徹底して嫌い、作品集の写真に白い絵の具で着色して白い壁面を捏造していたという。
自然から切断され、客観(オブジェクト)としての単一性を維持した「写真的」建築。
一方ブルーノ・タウトは視線が固定されない建築、意識と物質が切断されない空間を目指し、
色を媒介とすることで物質と意識がダイレクトに結びつくというヴィトゲンシュタインの色彩に対する思考と同型の思考で建築を実現しようとしたという話。

ブルーノ・タウトは、むかしセゾン美術館で回顧展を見ましたが、「アルプス建築」のスケッチhttp://ziggy.c.u-tokyo.ac.jp/files/...なんかはいまいち何が言いたいのかそのときはわからなかった。神秘主義的だなと漠然と思っただけでしたが、あれは自然(大地の地形)との境界が曖昧になるような建築、「個」を越えて自然と一体となるような理想の建築のことだったんだなあと今になって理解できるような気がします。

この本で隈研吾さんは、そのように現代建築を主観(サブジェクト)と客観(オブジェクト)の相克という視点で捉えているようです。もちろんタウト賛美の側に立って。


後半は自作について解説のような色合いが強い文章になってきますが、疑問がいくつか湧いてきます。
たとえば隈研吾さんがかつて用賀に建てたM2ビルhttp://home10.highway.ne.jp/i496/...はいったい何だったのかということ。
あのエンタシスこそオブジェクト以外のなにものでもないように見えるのですが。
以前は「カオスの生成」というような説明をされていたようですが、よく意味がわかりません。
はっきり「ポストモダン」という当時流行のキーワードに乗っかってみた、と言っては・・・いけないんでしょうね。
ついでに『亀老山展望台』のデッキに配置されたモニターなんてほんとに必要なの?
「風景を見ている私を見ている私を見せる」というのは、初期のメディア・アートなんかによくあった手ですが、これまた流行に乗っかっただけでは?なんて意地の悪い見方でしょうか。

一流建築家は次々と新しい建築を設計して建築雑誌に載せてもらわなくてはならないので、『反オブジェクト』というキーワードを作っても、どこかに雑誌向きの「見せ場」を作らなくてはならないということでしょうか。
浅学で迂闊なことは言えませんが、そんな印象を持ちましたがどうでしょう?

オブジェクトを見えなくするという点では、安藤忠雄さんの仕事にそれを感じますね。
最近では同潤会青山アパートのスケッチhttp://www.ejrcf.or.jp/gallery/...を見ても、ほとんど街路樹に隠れて建築がよく見えない。
プレゼンテーションがうまいですね。

「台座の上にいかなる物質、いかなる形態を、いかに慎重にセットしたとしても、そこにいや応なくオブジェクトが出現してしまう。ほとんどの現代美術はこの台座による生成作用に依拠しているがゆえに、退屈なのである。便器がオブジェクトになりましたと誇る方法論から抜けだせないがゆえに、退屈なのである。」

これはちょっと違う気がします。
デュシャンは全然誇ってなんかいない。台座による生成作用に依拠しているそれまでの芸術を茶化したのであって、それ以降だれも怖くて台座なんか使えなくなったのが現代美術なんじゃないでしょうか。

そういえば建築のポストモダンって、台座の上に過去の建築様式を継ぎはぎして乗っけたものじゃなかったでしたっけ?

なんだかキーワードをリスペクトしてるのかしてないのかよくわからない文になりましたが、建築だけでなくいろんなことを考える契機になった本であることは確かです。


http://www02.so-net.ne.jp/...

隈研吾『反オブジェクト 建築を溶かし、砕く』

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ミノル画像 投稿者:
ミノル
詳細情報
  • 人名: 隈研吾
  • 発売元: 筑摩書房
  • 年(代): 2000/07
  • 2003/05/08更新
  • 2003/05/08登録
  • 3114クリック

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コメント (10)

最新コメント5件

2003/05/09

ミノル チェック完了!太宰治のパロディーですね「恥の多い建築を作ってきました」って。苦悩する建築家の物語。笑いごとではないのでしょうが。

スズキシゲオ 亀老山展望台の初期案と現況を観ると実に流行に敏というかなんというか。。。

2003/05/11

87G 書いていることと自作との間に解離はありますが、いつも面倒くさそうな表情の彼が私は好きです。この「反オブジェクト」もそうですが、「新・建築入門」「10宅論」などの著作や「負けるが勝ち」という論文など、常に話題を提供してくれる建築家です。コロコロ変わる事で有名な彼の作風ですが、最近のFRPの住宅や竹を使った住宅、ガラス骨材のコンクリートの建物など、素材の新しい可能性に挑戦するようなもの達はなかなか面白いです。これももしかしたら伊東豊雄がアルミニウムに挑戦した後追いかもしれませんが・・・。

2003/05/12

ミノル NHKの『ようこそ先輩』で拝見しましたが、私もどちらかというと嫌いな顔ではありません。書いておられることもわかりやすくて、いい先生だと思います。 でもそれを言っちゃうと建築家として見る必要がなくて近所のおっちゃんと同じになってしまう(笑) 可能性に挑戦するのはとても素晴らしいことですが、大量破壊兵器を開発する人だって可能性に挑戦してるのかもしれない。 一度に何人殺せるだろうか、なんて極論ですが。問題は目的ですね。「建築雑誌に載せてもらうため」が一番の目的でなければいいのですが。グラビアクイーンじゃないんだから。冗談はさておき、きっと色々悩んでおられるのだと思います。でも太宰しちゃまずいと思います。敬愛されるタウトのように妄想でもいいから理想の建築をプレゼンテーションされてはどうでしょう。もうされてるんでしょうか。安藤忠雄さんはいつものように勝手にグランド・ゼロのモニュメント?の模型作ってますね。ことばと同時かことばより先にカタチで見せる。ああまたやってるよ(笑)と思いながらも憎めないとこがあります。すっごい生意気ですいません。

2003/05/13

87G やっぱり素材や工法や構造に挑戦する目的は「次の仕事をもらうこと」じゃないでしょうか。自分の作りたいものを作ることが建築家の仕事ではないですし、基本的にクライアントが何か言ってくるのを待つことしか建築家には出来ませんから。そんな中で、頼まれてもいないのに設計してみる安藤さんのバイタリティは尊敬に値するとは思います。しかし作ること以外のアプローチ、つまりリサーチという分野で活路を開いたコールハースのスマートさの方に、私はより可能性を感じます。

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京都大学建築学科出身の京都在住女2人ユニット 建築のことについて極めてポップにまじめに愉しく軽やかに語っております。 最近はいろんな雑誌に原稿を掲載しているためかHPの...

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