安藤忠雄『連戦連敗』
東大で2000年に行われた5回の講議をもとにした講義録。
生意気を承知で言えば、現在の「建築」についてほとんど私が思うのと同じようなことが書いてあって驚きます。
ずぶの素人の私ごときにわかってしまって大丈夫なんだろうかと少し不安なくらいわかりやすい。
正論っぽいものはまず疑ってみたいという気もするんですが、私にはちょっと隙が見えない。
安藤忠雄への鋭い批判を聞いてみたい気もします。何かないですか?髪型とか以外で。
簡単に言うと今は「なんでもできるんだけどなにやっていいかわからない」状態なんでしょうね、建築って。
建築家が「とにかく自分はこれをつくりたい」という確固たるイメージを打ち出しにくい時代だと思うと、この本でも書かれています。「リアリティーの喪失」「戦うべき対象を見失っているのかも」「建築家の側に求める形がない上に、その形を規制する力学的法則(構造解析技術)のたがが、はずれた」今、求められる論理のひとつの方向としてエコロジーやサステナビリティーを拠り所とする方法をあげられています。
しかし安藤さんはその論理的根拠のかなめをサラッと押さえてはいますが、深追いはしてないように読めました。
自然と共生するんやったら熱いとか寒いとか文句言うな、とは大っぴらには言わないでしょうが、目の前に水があるんやから建物も水とつなぎましょうや、とかクライアントには言ってる気がする。わかりやすい。
安藤忠雄さんって、どうあがいても見えてしまう建築を見えなくするっていうことに対して、とても感覚的、生理的な欲求からアプローチしている人だと思います。
大阪中之島公会堂の中にタマゴを入れるとか、大谷石採掘場を地下劇場にするとか、ニューヨークのグラウンド・ゼロに何もないモニュメント?を作るとか、とにかく見せない建築を頭じゃなく、からだで、手近な紙になぐり書きのスケッチをするときから勝手に手がそういう方向に動いていくんだと思います。
これこれこういう思想があって、ゆえにこのようなカタチになる、といった演繹法で考える人ではないですね。
しかし例にあげた3件とも実現していないという悲しい現実があらわすのは、まだ社会がそこまで成熟していないのか、あるいは沈み切っていないのか、そのどちらかでしょう。
余談ですが、先月号の『BRUTUS』のインタビュー記事で菊竹清訓さんは「メタボリズム」でいく、というようなことをおっしゃってましたが、この本を読むと「メタボリズム」って1960年頃からあるスローガンだったんですね。有機体の新陳代謝を構造モデルとしたため、高度経済成長時代の「スクラップ・アンド・ビルト」指向と読み替えられ後の批判にさらされたということらしいですが、「理想都市」という夢を見続ける姿は個人的には好きです。でも、今や都市レベルや国家レベルでそれを実現するのはちょと不可能っぽい気がします。一個の独立した建築の内的論理としては有効なのかもしれないと思いますが。ひとつのスローガンが有効に機能していた時代を懐かしむ気分はわかります。気分だけは。
(KWリンク多すぎて途中で挫折・・・実作が続々と・・・「連戦連敗」ってほんまかいな?)
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