辰野・ホタルまつり
塩尻から懐かしい蒸気機関車に乗って暫く行くと、山間に開けた小さな街に出る。
三州街道・小野宿を基点に栄えたこの街には日本最古の道祖神が今でも残っているし、国の天然記念物に指定された『蛇石』や珍しい『枝垂れ栗』なども見ることができる。
福寿草が咲き乱れる春から紅葉の秋まで、この箱庭のような小さな平野を気ままに散策するなら、誰か気の合う友人やうら若き麗人を伴って、風の匂いを頬に受けながら自転車を漕ぐのが相応しいのだろう。
そうして、もしそれが今の時季で、心地よく疲れた身体を休めたくなったらホタルを観に行く。
暗くなり始める夜の七時頃から数時間。
松尾峡一帯に設えられた散策路をのんびり歩けば、不意に何処からともなく湧き出た何百何千ものホタルの群れが或る時は神々しいまでに光り輝き、時には寂滅を想起させる深閑とした静寂の暗闇へと貴方をいざなう。
そんな時
ボクは小さな魔法瓶の中に「夜明け前」を満タンに詰め込んで、ゆらりゆらりと歩き続ける。
誰もが次第に寡黙になってゆく時間。
誰もが我と我が身の艱難辛苦を忘れる時間。
何故か今年も、パッヘルベルの「カノン」でも聞きながら出かけてみたいと思わせられる。
写真は「源氏蛍」











