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ゆーさーいりゅーじょん いしきというげんそう

「ユーザー・イリュージョン 意識という幻想」

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 手に取る者を思わずヒかせる4,200円という価格,500ページを超える厚さ……。しかしそれに見合うだけの知的興奮を味わえる本である。
 
 デカルトの有名な言葉を引くまでもなく,我々は我々自身の「意識」こそが我々の存在の根幹だと思っている。手塚治虫の「火の鳥・未来編」でも,主人公マサトの「存在って何だ?」という問いに対して火の鳥は「意識よ」と答えていた。ところがこの本の著者が紹介する最近の知見によれば,どうもそれは間違いであり,意識というのはナンとも欺瞞に満ちた錯覚めいた存在らしいのである。

 そんなアホな,と思うでしょ? またぁ,トンデモ本の類を読んでコーフンしてるのか,とおっしゃるでしょ? しかしそうではないのだ。これはキッチリと実験によって証明されている事実であって,どうにも反駁のしようのないものなんである。以下,簡単に説明しよう。
 
 我々のいろんな動作,手を動かすとか首を振るとかそういう動作は,それが行われるに先立って脳内に電位変化(準備電位という)が起きることが判っている。つまり脳は筋肉を動かすために,まずはその命令を用意するわけですな。で,実際に測定してみるとこの準備電位が発生してから実際にその動作が行われるまでにはおよそ1秒ほどかかるという結果が出た。ここまでいいですか?

 さて,この結果は普段の我々の動作,頭を掻いたり耳をほじくったりしている感覚に沿うモノだろうか? もっと簡単に言おう,我々は「頭を掻こう」と思い付いてから実際に頭を掻くまでに1秒も時間をかけているだろうか? そんなこたぁない,とオレは思う。ノロマのあんたはどうか知らんが,オレは断じてもっと素早く頭を掻いているという自信がある。

 でも脳内の電位変化は間違いなく1秒ほど前に発生している。ということは,である。体がその準備を始めてあとでオレは「頭を掻こう」と思うことになる,なりませんか? つまり頭を掻こうと本当に決めたのはオレの意識の外のナニかであってオレの意識ではありえない。オレの意識はオレの脳が頭をかく準備を始めたあとで,あたかもオレが頭を掻こうと決めたんだい,と「錯覚」しているに過ぎないのだ。びっくりでしょ?
 
 とにかくこの本,熱力学に関わる「マクスウェルの魔物」問題から筆を起こし,クロード・シャノンの「情報エントロピー論」やゲーデルの「不完全性定理」を経由していわゆるサブリミナル・閾下知覚の研究に分け入り,上に出て来たベンジャミン・リベットの実験を経て複雑系,カオス理論,宇宙論に翼を広げるという知の大著である。付箋張りまくりで半月ほどかかったが実に面白くためになった。江湖博雅の読書人諸氏に是非ともお薦めしたい。
 

「ユーザー・イリュージョン 意識という幻想」

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詳細情報
  • ISBN : 4-314-00924-1
  • 発売元: 紀伊国屋書店
  • 人名: トール・ノーレットランダーシュ 著
  • 柴田裕之 訳
  • 2009/01/05更新
  • 2003/07/08登録
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コメント (10)

最新コメント5件

2003/07/09

Go涼 ありがとうございます。これでまた一歩,博雅さんに近づきました。

2003/07/28

魚返 ひさしぶりに覗かせてもらったら,面白そうな本が。 買っちゃいました。 第1部はなんだか訳がわかりにくかったですが,第2部あたりからエキサイトしてきました。 10年前に書かれている本なんですね。

2003/08/05

joki ”情報を捨てる”という話が非常におもしろかったです。

その辺の話,養老センセイの「バカの壁」に出て来る「情報は変わらない」に繋がったりして面白いっす。

2011/05/07

lightcyan ああ、この本何年も前に買ってまだ読んでない。読みたいけど、理系の人間からすると、もうちょっとそこのところ説明して欲しいってのが、いろいろあって読み進められなかったような記憶があります。

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