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獄医立花登手控え

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藤沢周平の時代小説。「春秋の檻」「風雪の檻」「愛憎の檻」「人間の檻」からなる全四巻の続き物で、舞台は江戸時代。

藤沢周平の作品で、こう二巻以上で連作になるものっていうのは、わりと主人公の剣が立ったりしているものが多いというか、実は立たなくとも、剣術を習っていたりするわけなんだけども、この作品では剣術ではなく柔術をやっている。“やわら”の師範代クラスなわけで。
まずこの点が、個人的には異色だったというか、最初は違和感があった。特に殺陣のシーン。この激しさが微妙に少ないというか、相手はたいていは単なる(?)ならず者だからして、匕首vsやわら、という構図になってしまうんだけども、それがまあ、物足りない感じがしたっていうのかな。
けれども、一巻が終わり二巻を読み始め、って進めていくと、「だがそれがイイ」ともなってくる。なんといっても主人公の立花登は医者であるからして、血なまぐさい剣術よりは当身が基本の柔術のほうが、役柄にしっくりくるっていうのもあると思う。
話としては大立ち回りのある推理小説っていう感が否めない。それが延々と続く。その中で恋愛的なものもあるし、人間の情の深さ(よしあしは別として)を見ていく流れがあって、主人公は人間的にも多少は成長していくサマが見受けられていくという。
結構、なにげにこの主人公がモテたりしていて、またこの主人公にぞっこんになっちゃう女の子たちの素振りというか振る舞いというかも、最初の頃はそうでもないんだけども、全編を読み進めていくうちに、微妙にバレバレ感を受けたりするところもある。が、なんというか女の子のほうを応援したくもなったり、主人公の登に対して「オイオイ!わかってやれよ」と声をかけたくもなる。
主人公の登は、僕の好きな連作でもあり同時にこれと同じく四巻に渡る長編でもある「用心棒日月抄」なんかと比べると、ちょっとどうなのよって印象もあるんだけども、読んでいくとそのうちそんなことなくなるんだよな。つーか登って何歳?と思うコトはあるが。
特に良かったのは、やはりというか、四巻最後の章だ。これは実にスピード感があり、そして不安と期待をもたせる読ませ方を狙っているというか見事にその狙いどおりになってしまったのだが。

藤沢周平の長編モノは、それが物理的にそろそろ終わるなと実感しつつあると、「あー、もう終わりかぁ。いつまでも続けばいいのに」と思ってしまうところに、読んでいる間の面白さともろに対極する感情を読者に与えるのではないかと思う。

これはウェブ上で展開されるウェブジンなりその手のものでは決して到達できる観念ではない(少なくとも今は)。

まがりなりにもプロとしてウェブで喰っている者としては、そういう観点からも非常に興味深い作品だったと思うし、藤沢周平がもういない以上は、この獄医立花登手控えの続きっていうのが生まれて来ないということに、それはそれで深遠な情緒をもたらすのであった。

完【謎】。

獄医立花登手控え

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securecat画像 投稿者:
securecat
詳細情報
  • 発売元: 講談社文庫
  • 人名: 藤沢周平
  • 2003/07/11更新
  • 2003/07/11登録
  • 5581クリック

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コメント (5)

2003/07/24

viberharry 「春秋の檻」160ページあたりまで読みまして、殺陣の違和感に嵌ってます。跳躍して急所に蹴りを喰らわせるなどは、北斗の拳かと思いましたが(謎)、しかし「女牢」のような重い話に、江戸の頃の、今と比べれば残酷な世を感じたり。「用心棒~」や「よろずや~」とは又違った良さを感じつつあります。完(謎)。

securecat 定番のヒロインですが(謎)、今度のヒロインは一味違いますというか想像してニヤニヤしてしまいますた。わたしゃ(誰)。ていうか、なんか読んでると「ずるいよ!ずっこいよ!!」という気にさせてくれます流石は周平!(謎)

2003/07/29

viberharry 「ずるいよ!ずっこいよ!!」モード入りました(謎)。おちえをくれ!くれ!! 余談ですが、「ずるいよ!ずっこいよ!!」を6年ぶりくらいに聞いて感動しますた。

2003/08/08

96 これ、読んでなかった...。で、読んだ。藤沢周平のは全部読んだと思ってたので得した気分。いいね。人があんまり死なない分、周平節がグッと深さをましているように感じる。急がずゆっくり読んでいきたい。 余談:しかし、ゲロのことをああいう言い方をするとは知らなかった...。

2003/08/29

viberharry いつの間にかひと月も過ぎていましたが、読み終わりました。殺陣がない故の物足りなさ感は、やはり最後まで付きまといましたが、全四巻という長編ながら、これだけ読者に長さを感じさせないのは驚きです。登が旅立つ前の、極端に落ち込んだり仕事に精を出したりというおちえには、胸を締め付けられますね。旅立ち前夜などは、言葉になりません。何気におちえが巨乳である事も判明しますし(謎)。

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