『青の美術史』小林康夫
古代エジプトから現代美術までを、「青」というひとつの言葉だけを手がかりにして歴史=物語を紐解くというもの。
「古代の深い夜の色」と関連付けられて「死」の色として忌み嫌われた古代ギリシャ神話時代や、オリエント文明における「天空の色」ラピス・ラズリから始まり、キリスト教におけるマリアの「信仰」の青など、歴史と地域における「青」の認識の違い。さらに、17世紀ゲーテの「色彩論」に代表される光学の時代を経て発見された、フェルメールの光に内在する「青」。「光が暗黒を覆うと青が現れる」という、ゲーテの「色彩論」の反映から生まれた、蒼穹に不幸の意識を照らし合わせるロマン派の精神運動。その後、印象派やセザンヌを経て、やっとマチスに至っての色としての感情表現との結びつき。そして、アメリカ抽象表現主義としてのジャクスン・ポロックの「行為」としての絵画。ひいては、我々見る者が「感性」としてのみ対応することしかできない、物質としての「青」という、「空虚」性を前面に出した作品を作ったイヴ・クライン。
などなど、美術史体系に沿った内容になっているが、振り返ってみると、いつの時代も「青」ほど超越的な意識を秘めている色はないと気づかされてドキッとし、「青」とともに辿ってきた人類の歩みに感動する。
表紙になってるセザンヌの「サント・ヴィクトワール山とシャトー・ノワール」の絵や、中に参照として載ってる絵がホントに美しくて、ほぼ衝動的に手にとってしまった一冊だが、昨年あたりから興味を持ち始めている顔料、染料(ただし、青色に関してのみ)の歴史的な側面も扱っているので大変面白かったし勉強になった。
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コメント (6)
最新コメント5件
2003/07/17
あぷりこ 感受性溢れる緻密な語り口で、読んでると上質な時間が流れます。それでいて幅広い知識に支えられた率直な筆者の見解にはとても説得力があります。
2003/07/31
No.6 私が持っているのはポーラから出ている「isの本」シリーズなのですが、平凡社からも出たのですね。
あぷりこ 「isの本」は読んだことないんですが、残念ながら終刊なんですね。平凡社のこのシリーズは、時々「はっ!」とするような面白そうなものが出てるので、いつもチェックしてます。
2004/03/24
Tak isの本が出たときから読ませてもらってます。
何度も読み直しています。拙HPも「青」がテーマなもので(^_^)
2004/03/25
あぷりこ しかし、「青」をテーマにした作品って多いですね。これだけ色を単体として意識してるのは、他の色ではちょっと思いつかない。浮世絵の青、藍染の青が気になる今日この頃、もう一度、教科書でも開いてみるかなぁ・・
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