聖隷三方原病院栄養科の大いなる挑戦
食事は、言うまでもなく生きていくために絶対に欠かせない。おいしい店があれば並び、人々の集まりも食事という場が多く利用される。食事が幸せを運んでくるのである。しかし、病気その他の理由で、食べることが難しい人たちもいる。
この本は、日本で初めてのホスピスを開設した静岡県浜松市にある聖隷三方原病院の取り組みを描いたものだ。入院患者に提供する食事を、よりおいしくより楽しくするために、スタッフがどう取り組んだのかの記録である。特筆すべき点は、ここでは栄養科のスタッフが単なる給食製造員としてではなく、自信を持って医療者のひとりとして病院食に取り組んでいる姿だ。病院食が変わる、というとどうしても実際のメニュー構成などばかりに目が行きがちだが、やはり作る人の愛情や努力といったメンタルな部分も忘れないでほしい。
この本は料理レシピ集ではない。だが、ヒントがたくさん隠されている。近頃、通常の食事を摂ることが難しい「嚥下障害」がクローズアップされてきた。実際のレシピはその関係の本に任せるとして、この病院の取り組みを見ることも、嚥下障害にどう対処していくかの参考になる。
余談だが、巻頭カラーページに、浜松特産のうなぎを使った嚥下食の写真が等級別に載っていた。食べやすいようにうなぎをすりつぶしてペースト状やゼラチンを使い、なるべく元のうなぎに近い形に形成する。「最期のワンスプーン」までおいしく楽しく食事ができるように、という配慮が心に響いた。しかも、うなぎ。浜松である。こんな、ニクイ演出をしてくれる病院は、きっといい病院なんだろうな。
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