『博物誌 下』串田孫一
植物、動物、昆虫・・・。
普段、何気なく目にするこれらの生物にも、当たり前だがちゃんと名前があって、それぞれに宇宙ともいえる世界があるんだなと、上巻に引き続きしみじみ感じさせてくれる。筆者のそれらに向ける眼差しの優しさ、徹底した探究心は見習うべきものがあって、背筋がしゃんとする思いだ。散文詩ともいえる美しい文章を読んでいるうちに、「ときめき」という本当の言葉の意味が分かったような気がする。
お気に入りの一節を引用・・・
べっこうばえ
・・・日があたっていると、そのべっこう色がいよいよ明るく暖かにとろんと光り、脚を滑らせては時たま立てる羽音が、ミルクをかける前に軽く押しつぶすコーン・フレークの音である。
小春日和のこの日あたりに、べっこうばえはガラスの外へ出ようとしているのだろうか。どうもそれが毎年のことなので、私には彼がわざわざ好んでこんなところに暖まっているように思われて仕方がない。
ここから、ほら、見てごらん。垣根にそって、蜂やあぶの行列だ。こんな日は今年はほんとうに珍しい。それで、あんなにせっせと働いている。
そんなことを言ってやっても、べっこうばえは仲間に加わろうとはしない。窓を開けても飛んで行かない。
各項目に添えられている筆者の挿絵も秀逸。
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