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ツィゴイネルワイゼン

ツィゴイネルワイゼン

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サラサーテの「ツィゴイネルワイゼン」のSP盤。演奏中、サラサーテが何やら呟いているが、何を言っているのかは聞き取れない。

 陸軍士官学校のドイツ語教授の青地と、元同僚の友人中砂。生真面目な青地とは対照的に、中砂は女を狂わす性質の男だった。旅先の漁村でも、中砂に熱狂した一人の女が海に落ちて死ぬ。中砂はそれを哀しむでもなく、女の股から真っ赤な蟹が這い出てくる幻覚を見ている。

 青地と中砂はその夜、弟の葬式帰りだという芸者・小稲に会う。中砂は「弟の骨が桜色に染まっていた」と言う小稲の話に一方ならぬ興味を示し、以後骸骨に異様な執着を見せるようになる。

 一年後、中砂は小稲に瓜二つの女・園を妻にむかえる。しかし中砂の放浪癖はおさまらず、孤独な園は青地を誘うような素振りを見せる。中砂は園を咎めるでもなくむしろ面白がっているようで、青地に対して「取り替えっこしようか」と提案する。しばらくして中砂と園のあいだに娘が生まれ、青地の名をとって豊子と名付けられる。

 翌年、園は幼い豊子を残して死ぬ 。新しい乳母がきたという中砂邸を訪ねた青地は、園が赤ん坊を抱いているので驚くが、それは小稲であった。中砂は結婚後も小稲との関係を続けていたのである。
 また、青地が妻・周子の妹の見舞いに病院に行くと、義妹は周子と中砂の関係をほのめかす。青地は周子に事の真偽を問いただすが、周子はそれを病人のうわごとだと言い、青地にもそれを確かめる術は無かった。

 中砂は旅先でドラッグをやりすぎて死ぬ。数年後、小稲が連日青地の家を訪れて、中砂が貸してあるものを返してほしいという。今日は辞書を、翌日は本を・・・そしてサラサーテのレコードを必ず貸してあるはずだから、奥様に聞いてほしいと言うのだ。
 そうした要求を、真夜中に豊子と中砂が交わす会話から聞き取ったという小稲。不吉な予感がした青地は、小稲と豊子が住む家へ向かうが、そこで青地が見たものは・・・。

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 この映画では、「いつどこで誰が何をどのようにどーした」という、所謂「おはなし」というのは明確にされていません。その代わり、豊富に与えられるイメージの数々から、そのウラにある意味を読み込んでいくようになっています。故に、画面から片時も目を離すことが出来ない、この異様な緊張感。凄いです。視覚的マゾになります。

 ちなみに私の感じとった最も強いイメージは「赤」です。この映画、特にフィルムに加工したりすることもなく、まあフツーに撮られているので、画面全体の印象はどことなく暗いのですが、随所がなんとなく赤いのです。
 冒頭の蟹の赤い甲羅を筆頭に、青地夫妻が義妹のお見舞いの帰りにお座敷でがつがつ食らうお料理の椀が全て真っ赤だったり、中砂の死を告げる電話のシーンで桜の花びらが(一枚一枚が大きすぎるので明らかに偽物なんですけど)ばさばさと散っていたりします。細かい所では、小稲の弟の赤い骨、アレルギー持ちの周子の身体に出る赤い斑点、ラストの豊子の足跡に滲む血などもそうですね。
 赤は血の色、肉の色、官能の色。表面的には静かに進行する物語の裏にある、登場人物たちのどろどろした感情を表しているように思えます。

 それにしても中砂こと原田芳雄、悪っるい男や!変態っちゃあまあそれまでなんですが。でも女子は往々にしてああいうのんが好きなんですよね。一方、控えめな演技の藤田敏八は、ワルになりたいのになりきれない優等生の青地をうまく表現しています。
 青地と中砂がとことん正反対に描かれているのも面白いですね。見た目は勿論の事、住んでいる家も全然チガウ。青地の家は海の見える開放的な洋館で、お客も多い明るい家。中砂家はというと、まるでタイムトンネルのような切り通しの坂を登ったところにある、純和風建築。書生もおらず、世間から隔絶されていて、間取りも何だかよくわからない。一歩踏み込んだだけでヤな事が起こりそうな家です。

 夢と現が入り乱れて、何がウソで何が真実なのか見境がつかなくなってしまうこの作品、ややもすれば「ワッケわからん」と言われてしまいかねないんですけど、1980年の日本アカデミー賞・最優秀作品賞や、ブルーリボン賞・最優秀監督賞など数々の賞を受賞しています。キネマ旬報1980年代ベスト・テンでは第1位。ほんまかい!
 現在の日本アカデミー賞は不毛すぎて見る気も起こらないですけど、かつては然るべき映画にきちんとした評価が下されていたんですねえ。そういう意味でも感慨深い作品です。

ツィゴイネルワイゼン

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詳細情報
  • 人名: 鈴木清順
  • 原田芳雄
  • 藤田敏八
  • 大谷直子
  • 大楠道代
  • 原題: 内田百間「サラサーテの盤」
  • 2003/10/12登録
  • 4329クリック

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コメント (17)

最新コメント5件

2004/01/15

#FFFFFF そうなんですよ、「けん」出ないんです。仕方が無いので百けんと書いている方も多いですが、私は聞にしてます。でもやっぱこれも、外道なんだろうなあ。

kiri 百鬼園とも書くそうです。これもいいですねー。強面だけど猫についてのエッセイや日記を読むととっても可愛らしい方ですよね>百鬼園氏

#FFFFFF ひゃっきえん→ひゃっけん 成程ねー!恥ずかしながらエッセイ読んだことないんです。「百鬼園随筆」、読んでみようかなあ。サラサーテのレコードも聴いてみたいのです。

2004/01/18

ジーナ サラサーテの声の入ったレコード聞いた事があります。ゴニョゴニョゴニョってなんか言っているのが聞こえます。 ところで、”間”は”門+月”と同じ意味なのでOKだと思いますけど、”聞”はやっぱりちょっと違います~。

#FFFFFF 意味は「間」と一緒なんですか~(20へえ)。じゃあそっちに直しておこう。ありがとうございます。レコード、何言ってるんでしょうね…。

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