『監督 小津安二郎』蓮實重彦
この本を読んで、小津映画の見方が180度変わった、いや小津映画だけではない、すべての映画の見方が180度変わったなどと言うつもりはない。
180度ではなく360度変わったと言うべきだろう。
なんだ、一回転して元に戻っただけじゃないかと言う人は何もわかっていない。
180度の回転は、単に視点をずらすといった、ごくありふれた誰もが日常的に経験する振る舞いに過ぎず、そこに待ち受ける風景は、天地が入れ代わり倒立した視点の新鮮さに束の間の驚きをもたらすかも知れないが、単に自分自身が倒立しているだけだということに気付いてしまえばあえなくもとの単調な風景に溶け込むことができる。
それはあらかじめ安全を保証された遊園地のアトラクションに似ている。
しかし、360度の回転は、結果としてもともと見ていたモノには何の変化もなく、すべて青空のもとに身も蓋もなく曝され続けてきた風景を再び目にするだけだろう。
(重要なのは「再び」目にするということだが)
180度という数字がもたらすものは位相の違い、つまり「倒立」であり、360度の回転は「運動」だ。
ピタリと360度回転する事によって、その「運動」が純化され、「運動」そのものがあらわになる。
その運動は目眩をもたらす。
その目眩を過剰なまでに求める姿勢を「倒錯」と呼ぶのかもしれない。
そして、還暦=暦が一回転する年の誕生日までピタリと60年生きた映画監督がいた。
誰もが知るように今年は小津安二郎生誕100年の年であり、『監督 小津安二郎』出版20年の年でもあります。
それゆえ『監督小津安二郎 増補決定版』出版の年にもなりました。
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コメント (4)
2003/10/14
yatsu 『監督 小津安二郎』(筑摩書房)増補決定版刊行記念「蓮實重彦 とことん小津安二郎を語る」2003年10月18日http://www.excite.co.jp/book/event/...
ミノル 残念ながらこの日は行けないんです。行かれる方にはぜひキーワード登録していただきたいですね。
2003/12/14
sankaku 行ってきました。蓮實氏は非常にウイットにとんだ方で学生たちとの討論などで慣れているのか名司会でした。山根貞男なんかはエリート大学出の映画好きのおじさんみたいな感じで全然おもしろくなかったです、、、。友人が言うには小津は「回り続ける永遠のアヴァンギャルド」だそうで、本当にそのような言葉がピッタリ。DVD買おうかな~。
2005/01/06
tomoki y. ミノルさん、上の紹介文、文体が「蓮實さん」してませんか?(笑) この本、ハードカバーの初版(1983)が出たとき買いました。引っ越しを重ねるうちに、どの段ボール箱に入っているか、分からなくなってしまったので、のちにちくま学芸文庫版(1992)も購入。「増補決定版(2003)は未読です。はじめは独特の文体になじみにくく、いまだによく分からないところもあります。でも、蓮實さんが、とことん小津監督を敬愛する人だということだけは、すぐに分かりました。だから、たとえ分からなくても、ときどき思い出したように、ページを繰ってみたくなる、そんな本。ところで、トリビアが2題。 その1:東大を退官されたころからでしょうか、蓮實さんの肩書き、「フランス文学者」よりも「映画評論家」と紹介されることのほうが、多くなったような気がします。「文学より映画のほうが好き!」というのが本音なのかなぁ。 その2:蓮實さん、身長が190センチもあるんですって。文字どおり、知の「巨人」だぁ!
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