グラディヴァ
グラディヴァ-ポンペイの空想小説/イェンゼン
この本は前半がドイツの作家イェンゼンの幻想的な小説(グラディヴァ/1903年)になっていて、後半はその小説を精神分析的アプローチで読み解いたフロイトの論文(1929年)になっています。
イェンゼンが無意識的に書いた小説をフロイトが1つ1つ分析していくスタイルは文学にはじめて精神分析をほどこしたものとして画期的だったそうなのですが、なによりもイェンゼンの小説そのものが面白いです。
考古学者である主人公が古美術展で女性を描いたある浮彫をみつけ、その石膏模型を手にいれます。
「浮彫に描かれた娘は少しうつむき加減でスカートのすそを持ち上げていたためサンダーレをはいた足がのぞいていていた。
左足を前に踏み出し、それに続く右足はつま先が軽く地面に触れているだけで、足の裏とかかとはほとんど垂直に上がっていた。
この古代彫刻には珍しい、真に迫った、生き生きとした動作はまれに見る軽快さと自信に満ちた落ち着きとの二重の印象を与え、飛ぶような姿勢はしっかりとした足取りとあいまって、一種独特のしとやかさをそえていた。」
主人公はこの娘にグラディヴァ(すばらしい歩き方の娘)と名づけ、さまざまな空想にふけりますが、ある日突然この娘が発掘されたポンペイの遺跡の飛び石のどこかを歩いていたという確信的な考えにとりつかれます。
そしてポンペイへと旅立ちますが、そこで浮彫にそっくりな娘と出会い、次第に妄想と現実の境があいまいになっていきます。
この浮彫に描かれた絵と強い日差しのポンペイの町並みを思うと、娘のまぼろしがゆらゆらと脳裏に浮かんできて、意識が遠くへ飛びそうになります。
フロイトだけでなく、ブルトンを熱狂させ、ダリの生涯を決定したとも言われている小説です。
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