村上春樹著『海辺のカフカ』新潮社(2002)
シンクロニシティは最近(『ねじまき鳥…』以降)の彼の物語の駆動力です。とりわけ、世界(地震)と自分が切り離されている意識を結びつけようとした『神の子…』からは、現実と象徴、明喩とメタファー、意識と夢…それらすべての横断的な接点を意識的に描くようになります。今作はこの路線を深化させながらも、いままでテーマ(失われるもの・身体・影との関係)をすべて掘り込んだ作品になっています。そのためか、僕には文章に多少のムラを感じましたが、それが作家として多様なの登場人物(氏の言葉によれば「それぞれのヴォイス」)を書き分ける手並みの表れともいえるのかもしれません。なんとかして前に進もうとする姿勢には関心します。自作にもっと期待。
あと、こういった接点を探る傾向は近年の気運ではないでしょうか。それは、テロ後に発表された短編映画集『セプテンバー11』(とってもいい映画です。http://www.tfc.co.jp/news/...)と「われわれは文化の監獄にいる」と経験と世界の距離を浮き彫りにした『ベトナムから遠く離れて』(1968)の間にもあるように。ここで求められた「倫理」のようなものは、本書の新たなテーマ――「責任」という言葉と呼応しています。
- 2003/11/13登録
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