カンキョウキキヲアオッテハイケナイ
環境危機をあおってはいけない
いろいろとモヤモヤしたものが少しはっきりした非常に目の覚める1冊だった。
正直書店で最初見た時は装幀、タイトル、帯のあおりからみて、悲観的な環境危機とは逆の極端に楽観的な本…かと思い手に取らなかったのだが、その後、書評やなによりも翻訳が山形浩生さんである事を知り読んでみた。
おもしろかった。と同時に多くの環境問題に対する、「正しいんだろうけど…なんとなく感じる違和感」の正体も認識。
最初に全体を言っておくと、これは非常にニュートラルな本だと思う。たしかに(タイトル、帯からしても)誤解を招く…ように感じる部分もあるし、また誤解されて引用、紹介されてることも多いようだが、(批判的な意見での引用は往々にして、元の意味と違って引用していたりする)基本的にこの本は環境問題に対して、一般的な意味と違う意味で危機感も持っているし、非常に前向きな内容である。
本書の内容を一言で言うと、世の中の「重要な問題(もしくは優先順位)を考えよう」という事で、世に溢れる、もはや半分常識と可した環境危機をあおることは、その重要な問題をむしろ見えづらくしてしまうんだ。という事だと思う。
ここからは、少し、あとがきの話をさらにまとめることになってしまうのだが…
例えば例にあげると、地球温暖化と二酸化炭素の排出問題というのがある。例の京都議定書の実現にはもの凄いコストがかかり、一方ではあまり効果が無いという議論がある。
この本を読むまでは、単純に「コストだなんだ言ってないで、気が付いた時に手後れになるよりも、出来る事からやっていけばいいじゃん!」程度に考えていたのだが、それは大間違い。反省。「出来ることからやっていく」なんていうきれいな言葉は目先の事しか考えない自己満足になりやすい。出来る事や予算には限りがあるんだから問題は、「何から」やっていくかを冷静に考えることなのに(それが、他の環境危機をあおることに対する違和感でもあったんだろう)。それでも目先の事でもやらないより、やった方が良いだろう…という意見もあるかもしれない。しかし、ここで非難してるのは、その目先の事で満足してしまい、より重要な問題を先送りにしたり、見えなくしてしまうことが問題だということだ。
で、話を戻そう。京都議定書のコストと成果については、毎年数千億ドルかけて、効果は100年後の温度上昇が6年ずれるだけ。その6年のために、そんなお金かける必要があるのか?という議論があること。
で、ここまでだと、まだ反感を持つ人は多いと思う。ので、もう少し具体的に。
で、この本のニュートラルで良い所そして、同時に誤解を招いてる所でもあるんだけど、それで「だから、何もしなくていい」と言ってるわけでは無いということ。
例えばそんな毎年何千億ドルも、かけるなら他のことに使った方が良いんじゃないか?という話し。例えば地球が温暖化したとして被害を集中的に受ける国に直接支援しよう(地球温暖化は全ての国に被害があるわけではない)。海抜の低い国に堤防を作ってもいいし、あるいは教育や産業に援助して、かれらが自分で対策を講じられるようにしても良いだろう。もしくはそのお金でもっと二酸化炭素を出さないエネルギーの開発や低コスト化にかけた方が長い目で見た時に効率が良いのでは無いだろうか? という事を言ってるのだ。
そもそも二酸化炭素が地球温暖化をもたらすからと言って、じゃあ出すのを禁止しましょう…てのは話しとしてどうなのよ?という事もある。こう言った考えの背景には先進国の罪悪感というのもあると思うのだが、罪悪感をベースにした行動ってのは、その罪悪感を無くす事が目的になり、なにが目的だったか分からなくなってしまうことは、よくある。また人は時に「二酸化炭素を減らす車を開発しましょう!」という発想よりも「車に乗るのを控えて、我慢しましょう」という方ががんばってる自分を実感しやすいので惹かれたりするし。
ここまで、書いて、やはりちょっと個人的に残念なのは、日本語版の帯のコピー。
書名は「環境危機をあおってはいけない」で良いと思うのだが、そのタイトルに対して帯には「なぜならば…」という受けが簡潔に盛り込まれていれば…と思う。
(章タイトルの「ぼくたちは未来を食いつぶして現在の繁栄を維持してるの?」や「公害は人間の繁栄を駄目にする?」って言葉の方がまだ良いような)
つまり、一般的な環境危機をおある事が、逆に重要な問題を見えづらくしてるんだよ…ということ、そのコストをもっと他に使った方が良いんじゃない?的な事が盛り込まれてればなあ、と。特に背の”地球環境はよくなっている。本書がそれを証明します”は「それを証明するだけ?」と思ってしまい、本書の内容から考えると損をしてると思う。常識の反対な事をあおって、センセーショナルにしようとしたのかもしれないが、読者は逆に退く気もするんだけど。
ともかく、環境問題に少しでも関心がある人は必読(冷静にニュートラルな気持ちで)だと思います。分厚い本ですが、むちゃくちゃ読みやすい訳になってます。
とりあえず、著者と訳者のあとがきだけでも立ち読みすると良いかも。
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というわけで、本書の訳者によるサポートページ。
本書に対する反論と著者の反論が訳されていて素晴らしいです。
こういった本を専門家で無い私などが読む時に、その反対意見を読めるというのは、よいです。
ここのScientific Americanとの論争やNatureの書評と反論を読むと、私の感想としては、本書の著者の方が誠意と説得力がある印象を受けました。
- 価格: 4500円(税別)
- 発売元: 文芸春秋
- 年(代): 2003年
- 人名: ビョルン・ロンボルグ・著 山形浩生・訳
- 2004/01/08更新
- 2004/01/08登録
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