フランク・ロイド・ライト/ユーソニアン・ハウス
磯崎新によると、ライトは、同時代からまったく孤立していたわけではなく、同世代の建築家対しての、それなりの価値評価もあった、ということらしい。ライトは、コルビュジエについては、ほとんど毛嫌いしていたそうだが、しかしミースについては、かなり高く評価していたそうだ。そんなミースへの趣味も感じられないこともない、一連の、「ユーソニアン・ハウス」という作品群。
二川幸夫による、ほとんどライフワークのような、フランク・ロイド・ライトの作品集、その一冊である「GAトラベラー・005 ユーソニアン・ハウス」
「GA トラベラー」というシリーズとして、ライトの作品集が数冊でているし(あるいはライト以外の作品集もおなじシリーズとして今後出版されるのだろうか)、そしてライトの作品集としては、001から008まであるようだ。わたしが手にしたのはそのうちの二冊、004と005。しかしほんとうはすべて欲しいほどに、そもそも写真集としてねこれはすばらしいものだとおもう。どうやら二川幸夫は、ほとんど別格的に、フランク・ロイド・ライトを高く評価しているのではないだろうか。もちろんライトは、そもそも巨匠ではあるのだが、しかしそれを、ほとんど「別格的」とするならば、多少極論じみてもくるのではないだろうか。しかしそんな極端な二川幸夫の執着が、わたしには、きわめて興味深い。
ミース・ファン・デル・ローエが、その空間のすべてを、「等価」なものとしてしまい、つまりそれぞれが不等価な、(古き良き)場所の概念を、無きものとして還元しつつ、しかしそれらは、等価でありながら、その空間のうちの、それぞれの地点は、結果として、「違ってはいる」という、いわば、モダンへの、アイロニカルな方法を(きわめて正当な方法を)、ミースが実践したとするならば、一方ライトは、その空間内の、それぞれの違いを(必然的に出現せざるを得ない違いを)、直接的に、「芸術」的に、あらかじめ取り出し実現しようという、いわばモダンに対する、極めて楽観的な方法を取った、と、言えるのではないだろうか。しかしいずれにせよ、「等価ではあるけれど違ってはいる」何か(モダンが理想とせざるをえない空間)を、本気で追い求めていたという点では、ふたりはたしかに、共通してはいるのだ。しかし一方ル・コルビュジェは、もっと極楽とんぼ的に、あっけらかんと、建築していたのではないだろうか。コルビュジェは、建築を、ちょっと容易に、信じすぎていたのではないだろうか。
もちろんそれはそれで、すばらしくはあるのだけど。
「ユーソニアン・ハウス」が、わたしにはとても興味深いのは、取り出すべき空間内の「違い」に対して、ライトが、きわめてストイックであり(楽観的になりすぎてはなく、つまり装飾過多ではなく)、あるいはまた、その「違い」の実現のための方法が構成主義的だったり、さらにはそのプランが、きわめて合理的で、巧みでもあったりして、つまり、ライトの割りには(ライトっぽくはなく)地味めに感じられるかもしれないが、しかしその内実は、きわめて豊穣なのである。現在の、建築的モードから言っても、「ユーソニアン・ハウス」が、ライトで見るべきものとしては、一番しっくりくるのではないだろうか。
- 2004/05/24更新
- 2004/05/23登録
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