The Cure / bloodflowers
00年リリース。ラストアルバムと銘打たれて発売されたのだが、これまで何度も解散宣言を撤回してきたバンドだし、現在新曲も録音されているので、その真偽は定かではない。これまで、ストレンジでダークなギターと耽美なメロディが混在した音のイメージのアルバムと、メロディアスギターでポップなイメージのアルバムが交互に、(まるで振り子のように)リリースされているが、これはバンドの中心人物であるロバート・スミス(vo&G)の精神的状態によるところが多いからだと思われる。「僕が歌えばキュアーになるのさ」と言い放つほどの自信家であり、「僕は子供を作ることが限りなく恐い、だって僕が生きているのが恐いのに、自分がどうしてそんな分身を作れるっていうんだい?」と繊細な部分を見せる男だからだ。
今回紹介する『ブラッドフラワーズ』はこの2つの感覚が混在した、そしてパーソナルな感覚のもっとも深いアルバムに仕上がっているといわれている。ロバート・スミスが今作のインタビューで「信頼している恋人・バンドメンバーも全て追い出して曲は1人で全て書き上げて、メンバーにはそのとおりに、演奏してもらったんだ。満足できなければ、みんなに当り散らして、精神的にも鬱な状態だった。」と語っている。しかし、出来上がった音楽を聞いたその場にいた全ての人間はその究極の音楽境地に感動し、涙したという(もちろんロバートもその1人だった)。出来上がりに満足したロバートは「この作品で引退する」という言葉を撤回し、現在また曲を作りはじめたというのも大変うなずける話だ。実は『ディスティングレーション』(89)もこの状態に近い感覚でレコーディングされているのだが、そのアルバムで感じられたどうしようもない絶望感はここにはない。
きっと、そこから10年近い歳月が、彼を変えたのだ。彼は信頼しあえるバンドメンバーと出会い、スタジアムを楽しく周った。そして、恋人と長らくの付き合いのうち、結ばれた、そう、その出来事全てが。1人で作り上げたはずのこの作品は、実は多くの人たちの思いが詰まった作品となったのだ。陰鬱さを持ちながら、悲しみの果てに見たもの、それはあまりにも美しいサンクチュアリだった。25年のキャリアなんて全く感じさせない、みずみずしくそして感動する音楽、キュアーの魅力はまさにそこにある。
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