儒教とは何か
加地伸行(中公新書)
儒教といえば、倫理道徳の類と考えられがちだが、この本ではそうした礼教性の部分以外の、宗教性、哲学性について多くのページが割かれていて面白い。
まず、宗教性(死生観)だが、仏教が「因果や運命に基づく輪廻転生」、道教が「自己の努力による不老不死」であるのに対し、儒教は「子孫の祭祀による現世への再生」である。
現世での楽しみを至上とし、また来世や天国を認めない者にとっても死は訪れる。さて、どうする? そこで、儒教では死者は、祭祀(招魂儀礼)によって現世に再生する、と考えるのである。
そして、こうした招魂儀礼(祖先の祭祀)と、父母への敬愛、子孫を生むこと、これらをまとめて「孝」とする。つまり、「孝」を通じて「子孫の祭祀による現世への再生」が実現され、自己の生命が永遠であることの可能性に触れうるのである。
哲学性(存在論)については、儒教の後継の朱子学(宋学)によって構築された。「無から有が生まれる」とする道教に対して、「存在とは無であり、同時に有である」とする。これは、孔子の言葉「述べて作らず」(良いものをピックアップするだけで、創作しない)とも整合性が取れている。
儒教は意識されることすらない、マジョリティの暗黙の宗教という気がする。










