「木村さん」
観ることが出来なかった作品への「感想」。
高嶺格「木村さん」
森永砒素ミルク事件の被害者である木村年男さんは、一級障害者で、独り暮らしをはじめて十四年目となる。木村さんは、劇団「態変」のパフォーマーとしても現在活躍している(高い評価を受けているようだ)。それがきっかけなのだろうか、高嶺格は、木村さんと出会うことになる。高嶺は、「障害者パフォーマー」である「木村さん」を、「自分と似たような存在」と、意識したそうだ。そして京都に住んでいた五年ほどのあいだ、かれは、木村さんの自宅介護ボランティアをみずから進んで行う、ということにもなった。そしてこのかれのビデオ作品「木村さん」とは、その「自宅介護ボランティア」の体験が元となって、そのとき撮られた映像を使って、創られた作品である(らしい)。したがってほとんどドキュメンタリー的に創られている(らしい)。つまり少なくとも、障害者の、自宅介護の、ある種の生々しさは、オブラートに包まれることなく、赤裸々に、作品化されているようなのだ。そしてその作品の率直さが、今回の上映中止という、行政(権力)の、言いがかり(抑圧)を招いた要因であったらしいのだ。
成人男性である木村年男さんの介護には、性的な介護も含まれていて、そしてそもそも性的な介護というのは、介護一般の中に含まれた「公式」なものでもあるらしいのだ。そしてこの「木村さん」という作品にも、「性的な介護」の場面が含まれている(らしく)、しかもそれはこの作品の、クライマックスでもある(らしいのだ)。だから男性器も写っている(のかもしれないし)、あるいは射精の場面もある(のかもしれない)。横浜美術館側の見解によると、この作品は「法に触れるおそれがある」とのこと。努力したけど、上映は見送り、とのこと。
森永砒素ミルク事件という、忘れかけていたことをよび覚ましたことがまずかったのか? しかし起きてしまった事件は、解決なんてするはずないし、その事件はその事件としてひたすら存在しつづけるほかない(あたりまえのことだ)。「和解」程度が、「ハッピーエンド」であるはずがない。「和解」程度で決着したと、思い込もうとする、わたしたちの立ち位置が、そもそもあまりにもインチキ臭い。それこそ自分で自分を騙そうとしているようにすら感じられる。「木村さん」という作品は、わたしたちのほんとうの立ち位置を、もしかしたら、照らしだしてくれている(のかもしれない)。もちろん観ないことにはどうしようもないけど。
あまりにも滑稽な、ことの顛末。
(以下をクリックの後、左の欄の、「94・横浜美術館の失態」をクリックしてください。どうしても「最新版」につながってしまうようです。)
- 2006/05/06更新
- 2004/09/02登録
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