世界テロリズム・マップ
杉山文彦 編 時事通信外信部著 平凡社新書 2004.01.19
『9.11以降の現代世界において、テロは世界的に重大な問題となっている。今や日本もテロの標的に名指しされ、もはや「対岸の火事」ではすまされない。なぜ「彼ら」はテロに走るのか。どうすればテロの連鎖を断ち切ることが出来るのか。テロを生む歴史的・政治的・経済的背景なども解説しながら、現地で取材した通信社特派員らが、テロリストたちの「論理」を解き明かす。
テロを引き起こす側の組織と人間にスポットを当て、彼等の行動と思想を追った連作ノンフィクション』 ―― カバー裏より。
目次
序章テロが身近に迫る時代……15
転がる女の首/「アフガン化」するイラク/「八十年味わった屈辱」/フランス革命にさかのぼるテロ/民主主義過激派と極左の盛衰/「世俗主義」への憎悪/日本にも警告
サウジアラビア~スーダン~アフガニスタン~?
「お前がわが地を去るまで攻撃する」
――ウサマ・ビン・ラディン[アルカイダ]……31
「交渉不能な相手」/特殊な「宗教王国」/テロリストを作った二人の男/米軍のサウジ駐留も「占領」/ビンラディン復活
エジプト~スーダン~アフガニスタン~?
「近い敵」より「遠い敵」を討て
――アイマン・ザワヒリ[ジハード団/アルカイダ]……43
超エリートの出自/鉄格子の中で復讐を誓う/「天から遣わされたrj」に接近/国内闘争から足を洗う/「遺書」出版後も健在か
クウェート~アフガニスタン~パキスタン
同時テロの「真の首謀者」
――ハリド・シェイク・ムハンマド[アルカイダ]……54
裕福な国の「よそ者」/航空機十一機の爆破を狙う/核施設攻撃も検討/隠れ家に息子との写真/すぐに「後継者」が登場(※2003.03.01逮捕された)
アフガニスタン
世直しに燃えた学生がテロ集団に
――ムハンマド・オマル[タリバン]……65
「神のお告げ」を聞き決起/パキスタンがテコ入れ/ナジブラ元大統領を虐殺/ビンラディンと一心同体に/全土に展開しない国際治安支援部隊
インド/パキスタン
「全イスラムに一つの旗を」
――マスード・アズハル[カシミール過激派]……76
デオバンド派の影響力/アフガンから過激派流入/獄中から六年ぶりに生還/「人間爆弾」攻撃を開始
パレスチナ
聖地を血で染める自爆テロの嵐
――アハメド・ヤシン[ハマス]……87
急増するテロ志願者/穏健派組織の中の武闘派/武装闘争でイスラム国家目指す/弾圧で逆に支持拡大
トルコ
敗れた「クルド解放の闘士」
――アブドゥッラー・オジャラン[クルド労働者党=PKK]……97
外国人も攻撃、泥沼の戦い/「クルド人のスターリン」?/犠牲者はクルド人/何のための戦いだったのか
アルジェリア
「踏みにじられた民意」への憎悪
――アッバシ・マダニ[イスラム救国戦線=FIS]……108
独立達成から強権体制へ/イスラム勢力の盛衰/老若男女、外国人も容赦なく/国民和解の試み
ロシア
巨象に立ち向かう「英雄」
――バサエフ野戦司令官[チェチェン武装勢力]……119
虐げられた歴史、原理主義の浸透/「自由、生活、生存権を守るための戦い」/大衆の度肝抜く犯行/女性も自爆テロを実行/アルカイダとのただならぬ関係
インドネシア
「東南アジア全域をイスラム国家に」
――アブ・バカル・バシル[ジェマ・イスラミア]……127
ビンラディンは「真のイスラム戦士」/スハルト政権の弾圧/反キリスト教から反米へ/路線の違いが鮮明に
日本~パレスチナ~レバノン
「テロリスト」か、「英雄」か
――岡本公三[日本赤軍]……137
革命を夢見た「赤軍兵士」/史上初の無差別自爆テロ/アラブ世界は賞賛/不気味な予言
中国
「アルカイダ系」の烙印押された独立派
――東トルキスタン運動……146
同時テロの煽りで"脚光"/繰り返される「罪状」暴露/「アルカイダの代理人」?/同胞から密かな支持も
北朝鮮
国家テロ工作員の数奇な運命
――辛光洙……156
六ヵ国語に通じたインテリ/突然の工作員選抜/金正日から直接指令?/「原敕晁」になり切る/「ミレニアム恩赦で」帰国、英雄に
イギリス
謎の指導者を捜せ
――「P・オニール」[アイルランド共和軍=IRA]
市民は狙わない/アパルトヘイト並みの差別/「血の日曜日事件」/シン・フェイン党の党首が親玉か/腹心が実はトップ?/今では「お荷物」に
スペイン
民族と階級と暴力と
――バスク祖国と自由=ETA……174
ETA誕生/蛇と斧/交渉決裂/イバレチェ構想
アメリカ
「罪のない人も殺されなければならない」
――ティモシー・マクベイ……184
銃マニアへの道/連邦政府への怒り/プレディ法とウェーコ事件/「不屈」絶筆/ある日突然テロリストに
ベネズエラ~ヨーロッパ/中東
「伝説のテロリスト」から「殺し屋」へ
――イリッチ・ラミレス・サンチェス(カルロス)……194
パレスチナ解放の戦士/得意の絶頂/転落の奇跡/「革命万歳」
ペルー
創始者は元哲学教授
――アビマエル・グスマン[センデロ・ルミノソ]……204
「ペルーのポル・ポト」/逮捕激の影にCIA/センデロ「復活」の懸念も
終章
憎しみの連鎖を断ち切るには……213
血塗られたラマダン/強硬な対応は成功せず/宗教国家は失敗する/一方的に民主化を迫るアメリカ/グローバル化時代の不気味さ
あとがき……225
主な参考文献……228
執筆者一覧……236
―――――――――――――
shimbunを使っている経験から、たんなる主観に過ぎないけれど時事通信は結構信頼できそうと思っていたので、少し前になるけどこの本を読んだ。後書きにも執筆中になんども書き直しを余儀なくされたと書いてあるが、今ではヤシンも殺害されているしスペインでのテロもあった。他にも自分が知らないだけで情勢は変化しているのかもしれないですが、とりあえず自分でPost-itを貼ったところ中心にを拾い読みして見ると、
序章:
オスマン帝国のスルタン(君主)が兼務していたカリフ(イスラム教の預言者ムハンマドの後継者を意味する宗教界の最高権威)制度が、列強による圧力を受けたトルコ近代化の父ケマル・アタテュクルによって一九二四年に廃止された。帝国は滅亡し、イスラム教にはキリスト教のローマ法王のような中心的存在がいなくなってしまった。p20
アルカイダ:
資金力が豊富で、従来のテロリストのように支援国に大きく依存しなくても世界中でテロ活動を継続できる。国連が二〇〇二年八月に発表した報告では、ビンラディンとアルカイダが保有する有価証券の総額は、各国の資産凍結措置にもかかわらず、なお円換算で四十億円に達している。この他裕福な支援者からの個人献金も年間二十億円に上るといわれる。p34
ビンラディンは九十四年二月、一族から勘当され、続いてサウジアラビア国籍も剥奪された。スーダン政府はアメリカとサウジアラビアの圧力で九六年五月、ビンラディンを追放したが、ビンラディンはアフガニスタンに戻って活動を続けた。p39
「ビンラディンの思想あるいは戦術には、同時テロのしばらく前から大きな転換があった。世界をイスラム教徒と『十字軍』に二分し、文明間の戦争、宗教戦争へ引きずり込もうとしている」――。ビンラディン研究で知られる保坂修司・早稲田大学イスラム科学研究所客員助教授 p40-41
ビンラディンの前でバイア(忠誠の誓い)を行ったのはわずか百八十人程度の精鋭で結成される。米中央情報局が(CIA)が考えていたよりずっとピラミッド型構造は著しく、その頂点に立つビンラディンが絶対的権限を握るという。p49
(ハリド・シェイク・)ムハンマドの名が初めて捜査線上に浮上したのは、一九九五年初めに発覚した「ポジンガ計画」と呼ばれる、後の同時テロの手口に酷似した反米テロ未遂事件だ。アジア各地からアメリカへ向かう民間航空機十一機を太平洋上で連続爆破し、さらに他の一機がワシントン郊外の米中央情報局(CIA)ビルに突入するという、恐るべき企てだった。(←これってよくある飛行機をミサイル代わりに使われる危険性なんて誰にも予想できなかったってのと矛盾すると思うんですが。本書でもさらっと流されてますが…)
そのムハンマドが二〇〇二年六月パキスタン南部のカラチに忽然と現れた。カタールのテレビ局アルジャジーラ(略)との会見に応じて「私がアルカイダ軍事委員会のトップだ」と堂々と名乗り、同時テロの計画の詳細を初めて明かしたのである。p59
アフガニスタン[タリバン]:
軍閥を蹴散らしたタリバンの勢力は二万人に膨れ上がり、南部一体を制圧して、(略)ついにカブール入場を果たす。しかし、一介のイスラム学生が戦闘機まで備えた強大な軍事力を急に整えられるはずはなく、「隣国パキスタンの操り人形に違いない」とラバニ(※少数派タジク人の大統領)らは批難した。p69
タリバン最高指導者のオマルは当初、部下の意見にも耳を傾けたが、次第に独裁色を強めやがて財力と武力を持つビンラディンらアラブ人テロリストを頼りにするようになる。
一九九六年五月にビンラディンがアフガニスタンへ舞い戻ってきたとき、オマルは世直しとイスラム法の徹底しか眼中になく、アルカイダのような欧米敵視の思想はまだ持っていなかった。九八年二月にビンラディンがアメリカ人殺害を呼びかけるファトワ(宗教令)を出したときも、オマルは「自分以外の人間がアフガニスタンでファトワを出すのは遺憾だ」と警告していた。ところがその年八月のケニア、タンザニアの米大使館爆破事件後、アフガニスタンが米軍の空襲を受けると、オマルの行動は急に反米的になり、アメリカが求めるビンラディン引渡しを拒否しつづけた。p72
(※報道ではビンラディンは単なる金持ちで、真の脅威ではないというような論調が多かった気がしたので、ちょっと意外。アメリカの安全の話でなく、文明や自由民主主義にたいする脅威という事だったのか?)
タリバン時代に駆逐された各地の軍閥は息を吹き返した。三一ヵ国から派遣された国際治安支援部隊(ISAF)約5千人は、当初カブール以外の地方には展開せず、一万人余の駐留米軍はテロリスト掃討に没頭、アフガニスタン新政府軍の育成も遅れた。軍閥はつけ上がり、勝手に通行料を取ったり、誘拐やレイプ、強盗を働いたりと、地方の治安悪化の元凶になった。この状況はタリバンの対等を促した一九九〇年代前半と酷似している。
案の定タリバンは再結集を図りだした。山岳地帯に潜伏していた指導部は二〇〇二年後半から聖戦を呼びかける宣伝活動を再開した。二〇〇三年に入ると南部一体で(略)テロを激化させ始めた。(略)いずれもタリバンが犯行声明を出したと報じられている。p74
常軌を逸した過激宗教思想を掲げる彼等が全国民を掌握できないことはすでに証明された。しかし国際社会が警戒を怠れば、タリバン残党はさらに凶暴化し、ビンラディンが潜んでいるといわれるアフガニスタンとパキスタンの国境地帯が、再び危険な国際テロの温床になる恐れがある。p75
[カシミール過激派]:
六五年の第二次、七二年の第三次印パ戦争でもカシミールは戦場となり、軍事力に劣るパキスタンは完敗した。そして七二年、カシミール問題を二国間で解決し、国際社会を介在させないという、パキスタンには屈辱的な「シムラ合意」がインドとの間で締結された。p81
パキスタン当局はインドやアメリカの圧力を受け、インド国会襲撃事件後にアズハルを(一年間)拘束した。(略)だが、パキスタンの民衆の間では「カシミールのイスラム教徒がインドに弾圧されている」という同情論が根強く、アズハルのような活動家が逃走資金の募金を呼びかけると常に多額の金が集まる。p85
パレスチナ[ハマス]:
ハマスは一九八七年十二月、第一次インティファーダ開始直後にガザで結成された。八八年の「ハマス憲章」によれば、ハマスはムスリム同胞団のパレスチナ支部と規定されている。p92
ハマスの母体となった同胞団は、(略)もっぱら教育、医療など、現在もハマスが力を入れている合法的な福祉分野に活動を集中していた。しかし、八二年のPLOのベイルートからの退去に象徴されるように、海外を拠点とするPLOの武装闘争が退潮する中で、パレスチナの同胞団内に武力による反占領闘争を望む声が強まり、まずハマスと双璧をなすイスラム原理主義過激組織である「イスラム聖戦」が八〇年代に初めに同胞団から分離、同胞団本体でもヤシンらにより、小規模な武装グループが組織され、これが軍事部門「イザディン・アル・カッサム部隊」の原型となった。ちなみにイザディン・アル・カッサムとは、一九三〇年代にイギリス統治下のパレスチナで反英武装闘争を指導した人物だ。p92-93
ヤシンは獄中からのハマス指導部にあてた手紙の中で「われわれの運動の将来への方向を、いかなる個人もグループも独占的に決定することは許されない」と書き、集団指導体制の維持を求めている。p93
ヤシンがテロに関わっているか否かについて、ハマス側は明確にはしていない。しかし、イスラエル軍幹部は『マーリブ』紙に寄せた記事で(一九九六年)の中で、殺人や活動家の募集、武器密輸などについて直接的な指示を与え、獄中からも指示を発していると指摘している。p94
(ヤシンは)イスラエル軍がガザ、ヨルダン川西岸、東エルサレムから全面撤退するなら「十~十五年の停戦」に応じ、場合によっては停戦の延長も可能だと何度か述べているほか、八九年には「パレスチナの民衆がイスラム国家を拒否するなら、私は彼らの意思を尊重する」とまで語ったこともある。p95
アルジェリア[イスラム救国戦線=FIS]:
九一年一二月の総選挙第一回投票で、FISはトップ2不在(※逮捕、軟禁が続く。頭を失い迷走の始まりとも)にも関わらず全体の八割の議席を獲得。FLN(アルジェリア民族解放戦線)は惨敗し、第二回投票を待たずにFIS政権誕生が確実と成った。ところが、軍部は翌一月、事実上のクーデターを起こし、シャドリ(現職)を辞任に追い込んだ。軍側は「イスラム政権が誕生し、民主化過程を停止する事態を防ぐ」として、第二回投票
を中止。地方議会を解散に追い込み、FISを非合法化した。民主主義を踏みにじった非常措置にもかかわらず、イラン革命に苦い思いを抱いていた西側諸国は「イスラム体制よりはまし」との思惑から、だんまりを決め込んだ。
こうした仕打ちに対してイスラム勢力は復讐を誓い、憎悪は残虐なテロに発展する(90年代最悪といわれるそうです)。p113-p114
[チェチェン武装勢力]:
同勢力とアルカイダとの間に、協力関係があるのは間違いないと見られている。それを裏付けるような証言、報道は枚挙にいとまがない。同時テロ実行犯グループを支援したとしてドイツで捕まったモロッコ人は公判で、同グループのリーダー格でテロで死亡したムハンマド・アタが当初、チェチェンでの独立闘争に加わる計画だったと証言したという。
同時テロで初めて起訴されたフランス系モロッコ人ザカリアス・ムサウィは、チェチェンに送り込む戦士の「リクルート担当者」だったと米紙は報じている。
バサエフがアルカイダをかくまっていたタリバン支配下のアフガニスタンで軍事訓練を受けていたことや、アルカイダの最高指導者ウサマ・ビンラディンと面識があったとされるアラブ出身のハッタブ野戦司令官、アラブ傭兵がチェチェンのイスラム武装勢力に加わっていたことを見ても同勢力とアルカイダの間にはただならぬ関係があることがうかがえる。p125-126
インドネシア[ジェマ・イスラミア]:
当時独裁体制を敷いていたスハルト大統領は、自らイスラム教徒でありながら、急進派の台頭を警戒していた。スハルトは六〇年代後半にスカルノ初代大統領から政権を奪取するに当たり、スカルノを支持していた共産勢力を弾圧した。その際、イスラム勢力の力を利用したが、イスラム教徒が共産勢力とそのシンパと見られる推定五十万人もの住民を虐殺したのを目の当たりにした。このため、政権を安定される上で、イスラム勢力が脅威になると判断。九八年に退陣に追い込まれるまで、自分が熱心なイスラム教徒であると印象付けることでイスラム教徒の反発を抑える一方、イスラム急進派の活動を許さなかった。
スハルト政権に目をつけられたバシルは民兵組織を作ろうとしたとして逮捕され、スンカルと七八年から八二年まで獄中生活を強いられる。出獄後の八五年にはマレーシアに脱出。ここでイスラム急進派の組織化を開始し、九五年にジェマ・イスラミアを立ち上げスンカルが最初に指導者についた。p130
ところがテロ活動を続ける中で、ジェマ・イスラミアの組織内でバシルに対する風当たりがにわかに強まってくる。バシルは急進派でありながら、現実主義者でもあった。現実社会の中で、どのように行動したら自分達の目的が達せられるか、冷静に分析する柔軟性も兼ね備えていた。原則論を唱える若手を中心とした強硬派は(略)徐々に反発を強めていく。p134
岡本公三[日本赤軍]:
テルアビブ空港襲撃事件(一九七二年五月三十日)が衝撃を与えたのは史上初めての無差別テロだったためだ。実際、死者のうち半数以上は皮肉にもユダヤ人ではなく、プエルトリコから聖地巡礼にやってきたキリスト教徒だった。それまでの過激派のテロは標的を絞り、民間人の犠牲者が出ないように配慮していた。また、実行犯の三人は最初から自爆を覚悟していた。評論家の立花隆は、このテロが一九九〇年代に頻発するイスラム原理主義者による自爆テロにつながったと指摘する。(略)
「もし連合赤軍事件がなかったら、テルアビブ空港襲撃も無かっただろう」と後に岡本は述懐している。「死ぬ気で革命をやろうとしても困難なのに、死ぬ気の無いやつが革命をやろうとしてもダメだ」――。奥平は軍事訓練中に岡本らにこう語り、連合赤軍事件を非難したという。連動赤軍事件はPFLP(パレスチナ解放人民戦線)内での彼らの立場も窮地に追い込んだ。こうして起死回生を狙った自爆テロは決行された。p141
テルアビブ空港襲撃テロは、国際テロ組織の連携が明るみに出た初めての事件でもある。驚愕した各国政府は事件に対する批難声明を次々と出した。日本はイスラエル政府に謝罪。犠牲者に賠償金を支払った。
一方、「一兵士に過ぎなかった」と主張する岡本はアラブ世界で「英雄コーゾー・オカモト」として一躍注目を浴びた。アラブ各地で賞賛の声が上がり、当時のエジプト首相は「事件はわれわれが対イスラエル闘争で勝利をおさめる力があることを示した」と述べた。リビアの最高指導者カダフィ大佐に至っては、「殉教者なら日本人が実行した今回の作戦と同様の行動をとるべきだパレスチナ人はなぜ、こういう行動をとらないのか」と大絶賛した。p142(アラブの理由不明な日本への親近感て、もしかしてこういうところからきてるのかもと思うと複雑な心境です)
中国 東トルキスタン運動:
「それから、中国側はETIM(東トルキスタン・イスラム運動)をテロ組織リストに載せるというアメリカの決定に満足の意を表した」二〇〇二年八月二六日(略)(アーミテージ米国務)副長官はアメリカと中国のテロ対策協力が進んでいると評論した中で、ごくさりげなく触れただけだが、西側記者は敏感に反応した。
記者 米政府はETIMをテロ組織とみなすのか。リスト入りを支持するというのか。
副長官 いかにも。すでにそうした。
記者 新疆ウイグル自治区では平和的抵抗が許されていない。非平和的抵抗を(西側が)テロと位置付けるなら独立運動の余地は無いではないか。
副長官 質問の意味が良く分からないが……われわれは少数民族の権利尊重の必要性についても議論した。p146
この地域は前漢末期の紀元前六〇年に「西域都護府」が置かれ、中国王朝の勢力圏に入った(現在の中国政府はこれを根拠に新疆は一貫して中国の領土だと主張する)。p148
ブッシュ大統領も、中国側から反テロ協力を取り付ける一方で「少数民族抑圧」には賛成できないとクギを刺すのを忘れなかった。
そこで中国側が大々的にキャンペーンを始めたのがウイグル独立派の「アフガニスタン・コネクション」、すなわちタリバン政権およびアルカイダとのつながりである。(略)「これまで選任以上がアフガニスタンのアルカイダ軍事キャンプでテロ訓練を受けた」と報じた。訓練を終えた工作員は新疆に潜入、爆弾闘争や暗殺に従事した、としている。p150
東トルキスタンの情報センターのアブドゥジェリリ・カラカシ代表は二〇〇二年一二月、以下の事例を列挙して「本当のテロリストは誰か」と弾劾した。
(1)カザフにあるウイグルスタン解放組織の創始者が一九九八年秋、自宅で襲われ翌年春死亡した。
(2)情報センターの中央アジア地区代表が九九年五月、キルギスのマフィアに拉致され行方不明となった。
(3)カザフのアルマトイで二〇〇一年五月ウィグル人基金の代表が自宅で惨殺された。
(4)キルギス・ビシケクのウィグル文化協会主席が二〇〇二年四月、暴漢に殺害された。
ウイグル独立派もこうした情報発信に努めているものの、中国当局の圧倒的な宣伝戦には太刀打ちできていない。二〇〇二年夏、キルギス政府から「今年五月にETIM」メンバー二人を中国に送還したが、彼らはビシケクで米大使館などの攻撃を計画していた」との通報が米当局に入った。この情報が、米政府によるETIMのテロ組織認定を最終的に決定付けたといわれる。p154
辛光洙:
辛に拉致指令が下ったのは一回目の潜入を終え、北朝鮮に戻っていた一九八〇年。調査部の幹部から、工作活動を円滑に行うためには日本人としての合法的な身分が必要だとして、日本人に成りすますよう指示されたのだ。安企部の発表によると、金正日からも直接、「日本人を拉致して、北に連れてこい。その日本人の身元事項を完全に把握してか日本人になり切り、日本で対南工作任務を継続遂行しろ」としれいを受けたという。p160(直接指示ってのもあれですが、対南工作って事は対日には拉致すら必要ないって事でしょうか……)
イリッチ・ラミレス・サンチェス(カルロス):
七四年九月十三日のオランダハーグのフランス大使館占拠事件(日本赤軍の奥平純三、西川純、和光晴生が大使ら十一人を人質に取り、パリで逮捕されたメンバーの山田義昭の釈放を要求)は、カルロスが背後で意図を引いていたといわれる。山田がPFLPと日本赤軍の連絡役を勤めていためだ。山田は釈放され、奥平らと合流した後、ダマスカスに逃亡した。
カルロスが最初に日本赤軍と接触したのは、ヨルダンでPFLPのシンポジウムが開かれた七二年五月で、シンポには重信房子らが出席していたという。同月三十日の岡本公三らによるイスラエルのテルアビブ空港乱射事件では、カルロスが犯行に使われた自動小銃や手榴弾を調達したとされる。
ペルー[センデロ・ルミノソ]:
二〇〇三年四月に米国務省が発表した国際テロ年次報告書によれば、二〇〇二年末時点で、中南米に国際テロ組織アルカイダの拠点が確立されているとの信頼できる情報は無かった。p212
本編はひとまずはここらへんで。
終章
『タリバン』の著者アハメド・ラシッドは、次のように喝破している。「急進的イスラムの理念は、組織が作るのではなく、指導者の性格や純粋さ、かれの個性が預言者ムハンマドの高さに近づくことができるか、といったことによって形成される。もし、社会が真にイスラム的であれば得られるはずの各個人のイスラム的特性を、こうした運動は前提としている。だからこのモデルはいつも独裁を許すことになる」案の定、イランの最高指導者ハメネイも、タリバンの指導者オマルも独裁に陥った。p220(この部分理解したいが、いまいち意味がわからない…)
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