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歩禅 (ゴルフの本質)

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或るパーソナリティの方から現代日本の子供たちには自発性・創造性・社会性が欠落しているってな噺をお聞きしましてね。

と言うわけでもないんですが

やがて、世界では子供たちをどのように鍛えているかってな話題になったんですね。

それで、突然ですがゴルフです(笑)。

アタクシの良く存じ上げている方で、ゴルフのことを座禅をもじって『歩禅』と表現した人がおりましてね。

胡坐をかいて心頭を滅却するのが座禅なら、歩きながら自身と向き合って己の心模様と対話するのがゴルフであると言う意味なんですが、なるほどと思わせられたりしまして・・。

日本ではもっぱら自堕落なアソビ人のスノッブな娯楽程度にしか理解されていないようなんですが、実際に本場のスコットランドに行きますってぇと、確かに随分と様子が違うんでございますよ。

ちょいと噺が長くなりますが

今を去ること十数年前。ちょいと用事があってグラスゴーからハイランド方面に旅をしましてね。

その時にとあるゴルフクラブで出会った貴族が、こんなことを言うワケです。

我がスコットランドではゴルフはノブレス・オブリージュ(高貴なる貴族精神)を養う為にある。

故にコースはすべて自然のまま。人工的に造形したのはグリーンだけと言ってもいい。

ミスを犯したらそれに見合う罰を受けるのが当然だから、加罰型のコースが多いのが当たり前である。

それが19世紀にアメリカに渡るとゴルフは単なるスポーツと化し、20世紀に日本に輸出されるに及んで下卑た娯楽になってしまった。

アメリカでは戦略型のコースも多々見受けられるが、日本では単にスコアの良否を争うだけの、如何にも箱庭的で安直なコースばかりが目立つのはその所為であろう。

なんてぇことをノタマウのです。

言われてみればその通りで、こちらとしては反論のしようがないから黙って聴いてました。

彼らにしてみれば平時では高い身分に相応しい特権を享受する代りに、イザとなれば率先垂範して死地に赴くリーダーシップを常に求められている立場にあるもんですから、どうしたって子供たちを幼い頃から鍛えておく必要があるんでして・・。

んでもって何が良いかって考えたら三つ残ったって、そのオジサンは言うわけです。

一つは、馬術と武器使用双方の鍛錬になる狩猟(ハンティング)です。日本の武士なら鷹狩ですね。

次が、敵陣に独り残された時にサバイバルしなきゃいけないってんで、フィッシングです。これもミミズのいそうな場所の選定の仕方から、餌がない時にどうすれば良いかってなことまで、今ならフライフィッシングの元祖みたいな擬似餌の作り方まで事細かに伝授したようで。

それで、最後に貴族として最も大切な資質であるところの『ノブレス・オブリージュ』を如何に育むかと言う命題にぶち当たった時に、彼らが取り入れたのが羊飼いたちが遊び半分にやっていたゴルフの原型だった・・・。

そのオジサンはアタクシが敬意を込めて「Sir」と言ったのを咎めて、「My lord」と呼び給えなんて偉そうにしておりましたから、おそらくはそれなりの爵位を持った人物だったのでしょう。

ゴルフに於いては風向きなどの状況判断・その状況に応じたクラブ選択・更には持てる限りの技術を駆使してショットを放つと言う作業を、すべて独りでこなさなければならない。

つまり、ひとつひとつ場面の違うホール(舞台)で、脚本家と舞台監督と主演俳優の三つの役割を冷静沈着に演じ分けなければならない。

これは戦争時に於ける参謀本部と後方支援部隊と前線部隊の機能をすべて独りでこなすのと同じで、常に沈着冷静・悠々として急ぐ不退転の決意が求められると・・。

その貴族精神を子々孫々に伝えると同時に、兄弟が何人もいた場合には世継ぎに相応しい人物か否かを振り分ける手段にもなった。

つまり、自発性・創造性・社会性を幼い頃から身に付けさせる為に、彼らはゴルフなるものを利用して脚下照顧の修行としたんですね。

そのような観点から見れば、確かに日本のゴルフは堕落していると言える。

少なくとも、白洲次郎が求めたゴルフ観とは別次元の娯楽の一種に成り下がってしまっている。

ってなことで

別にストイックなゴルフ道を押し付ける気はありませんが、中には我と我が身の在り様を映し出す鏡としてゴルフに勤しんでいる人もいるてぇことを、是非知っていただきたいと、斯様に思うわけです。

少なくともTVゲームを与えて放置しているよりは、自分でキャディバッグを抱え目土袋を提げて、雨の日も風の日も自己と向き合ってベストを尽くす。

そんな環境を与えてやれば、今より多少はマトモな子供たちが育つような気がするのでございますが、如何でしょうか。



                      
                        
  

歩禅

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涙腺子
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コメント (46)

最新コメント5件

2004/10/04

ののんがのん 歩禅、大変面白く読ませていただき勉強になりました。ちなみに白洲次郎が求めたゴルフ観とはどのようなものか?、それに関しての参考文献などお教え願いたいです。

涙腺子 晩年、氏が旧軽井沢ゴルフ倶楽部の理事長だった頃。ゴルフシューズの靴紐を運転手に結ばせていた某有名会社の社長を見て、「お前さんなんかが来る様なクラブじゃねぇからとっとと帰れッ!」と一喝したとか、自分の腕を棚に上げて何でもかんでもキャディの所為にする現役の総理大臣に向って「明日から自分でバッグを担いで回れッ」と怒鳴ったり・・。基本となるマナー・ルール・エチケットなど、ゴルフに係わるすべてを自分自身で配慮・処理できない人間にゴルフをする資格はないと言う毅然たる態度を貫いたエピソードは、枚挙にイトマがありません(笑)。青柳恵介著作の「風の男・白洲次郎」(新潮文庫)など、関連書籍はいろいろ出ていると思いますのでご参照ください。

2004/10/06

ののんがのん ありがとうございます!早速アマゾンで注文しました。白州次郎も素敵ですが、このスコットランド貴族の方も素敵ですね。

涙腺子 一緒にラウンドした記念にその爺様が自分のネクタイをくれたのですが、チェックの柄はそれぞれ貴族ごとにオリジナルのデザインが決まっているそうで、それを締めているだけで○○伯爵家と繋がりのある人物と判るようになっていた所為か、エジンバラでもグラスゴーでも大いに役立った思い出があります(笑)

2005/07/22

gluttonous 次郎さんのゴルフ観、溜息出ますね。。私事で恐縮ですが・・・。学生時代女子ゴルフ部で過ごしましたが、今のカジュアル化されたゴルフとは違い、マニキュア(足も)も許されず、黒白紺グレー襟付きJK着用という、日本体育会独自のドレスコードでした。ともあれ、うまい人はHOLEbyHOLE含め、いついかなるコンディションでも、歩くペースが同じでした。一定のリズムを保つことで、平常心とスウィングのリズムが整うのだとか。ゴルフってルールは細かいですが、所詮個人競技。空振か素振りか?誰も見てない時、言わなきゃわからないようなこともあります。さらには失敗を引きずってもいけませんし、まったく考えなくてもダメ。対峙するのはコースの自然と己。今日日の真夏炎天下や、台風、雪の日に、バッグ持って歩いて2roundすると、無の世界に突入(意識混濁)します(笑)。もちろん、やたら重たい目土袋で穴という穴を埋めて歩きつつ、誰の球を見失うことなく。人の邪魔せぬよう、自分の戦略を責めか守りか考えて歩く。1.5hでハーフをあがり、スコアはまとめなくてはならず。そういう意味では、コドモ向けスポ-ツに向いているのかもしれませんね。・・・とはいえ、私がまともに育ったかといえば・・・?えへ。駄文長文失礼いたしました。

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