すいかとうのひび
西瓜糖の日々
ちょっと前まで、河出書房世界文学全集でしか読むことができず、ブローティガンの著作のなかでも秘蔵的存在であった『西瓜糖の日々』。この作品は詩や映像でしかできない表現を小説でやってのけるブローティガンのよさが凝縮されていて、いつの時代にあっても人の心をノックする普遍性にあふれるすごい小説だ。
『西瓜糖の日々』が浮かび上がらせるのは、人と人との間に生じ流れて消える空気の振動だ。あきらめと裏腹のやさしさや、日常を彩るちっぽけな笑いや、誰かの悲しみと引き換えに与えられた私の幸せなのだ。言葉にも、いや、感情にすらかたちを留めないそんな揺らぎを、ブローティガンは行間に浮かび上がらせる。そこにある言葉といったら単純でありふれたものなのに。
・・・たとえば、隣にいる恋人が仏頂面をしている。あなたは「迷惑だな、早く機嫌がなおるといいのに」と思っている。でも、ふと思う。「私は何か悪いことしたのだろうか」。そして、沈黙の答えを捜しはじめる・・・ 何か言いたげで何も言わない『西瓜糖の日々』は、こんな感じの優しさや想像力が鍛えられる繊細な小説である。おすすめです。
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コメント (3)
2004/10/12
Marlbana 以下、佐藤良明『ラバーソウルの弾み方』より抜粋。
「ブローディガンの小説の中でもとりわけ『西瓜糖の日々
』だった。木曜日には黒い無音の太陽光線が世界から光と音を拭い去る。一番星と二番星が、それこそチャッチャカが始まるまえのふたつのセンコ花火みたないにくっついて、ひとつの巨大な星になる。<<あの頃>>、ブローディガンが僕達にむけて発する『なあんてね』にはカラー・セロファンの透明感があった。」
拾得 十代の私はこの世界にやられました。
ポーリーンでしたっけ。いまだサイケなヒップで日々が成り立つか?
2004/10/14
セレモニカ 「サイケでヒップな70年代小説」という時代背景より、アレゴリーに満ちた普遍的なファンタジーとして読めてしまったのです。自分が70年代を実際に知らないのがその理由ですね。(はたまた読解力不足?!)この小説はダークだったりもして、酔っ払いたちが集団で自死するシーンは(タイムリーすぎますが)、最近あった暗いニュースに通じる気もします。でも、閉塞感100%の『アメリカの鱒釣り』のほうが、今の時代共感を呼ぶのかなとも思う・・再考でした。(恋人はポーリーン、ピンポンです)
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