ササメユキ
細雪
谷崎潤一郎といえば 私の中では『痴人の愛』が長いことベストだったのだけれど
(ファム・ファタルに密かに憧れる乙女心v)
『細雪』を読んで気持ちが変わりました。今では この作品が谷崎の中でいちばん好き。
中学生くらいのときに一度手に取ったことがあるのですが、そのときは特に盛り上がる劇的な事件もないので退屈と思って途中で投げ出したのだけれど
ふと最近になって再び読んでみる気になってページを捲ったら 面白くて引き込まれました。
起伏のない物語と思っていたけれど 淡々と描かれる世界の雰囲気が あでやかで典雅で読んでいてとても心地良い。
戦争へ巻き込まれていく時代を舞台にしているというのに お花見や蛍狩り、四季の移り変わりを楽しんだり、映画や歌舞伎や旅行にも行ったり、
まるでそこだけが別世界のような優雅さ。
きらびやかな派手さとは違う、静かで風流な経済的・精神的な豊かさに基づいた古き良き日本のゴージャスさ という感じ。
ところで以前読んだとき、私は大和撫子な三女・雪子よりも自由奔放な四女・妙子に魅力を感じたのですが
今は断然雪子派です。
時流とともに傾きつつあるけれど船場の名門・蒔岡家の娘であるという誇りを持ち、格式を重んじ、日本の美や伝統をこよなく愛する雪子。
はっきりしない意思表示で周りを振り回すけれど、家族相手には結構辛辣な意見も言うし、実は芯のある女性であることが判ります。
反対に好きだった妙子のことは嫌になってしまいました。
家族がいろいろ心配しているのに悉く裏切るし、最後の姿も因果応報という感じ。
こういうタイプは 一度堕ちるところまで堕ちてみないと判らないのかもしれません。
(↑私も母に反発する度 こう言って叱られましたが・・・)
それにしても、この四姉妹の魅力的なこと。
中でも いつまでも若々しく、妹たちよりも華やかで美しいと言われ、優しい旦那様と利発な娘を持ち、
関西社交界の代表的な奥様と呼ばれる次女の幸子がいちばん理想の奥様的存在として描かれている気がします。
谷崎のミューズ・松子夫人をモデルにしているといわれるだけあって、描写がとても魅力的。
もしかしたら読む年齢ごとに違った人物に感情移入して 違った読み方ができそうな本かもしれません。
だから若かりし頃は格式にとらわれず新しい女性として生きようとした妙子に惹かれ 今は雪子に惹かれるのかも。
となると、次回 数年後に読み返すことがあったら、そのときは年齢的にも幸子派になりそうな予感がします。
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