蟒之記
発酵学、醸造学の学者である小泉武夫氏が書いた「酒豪小説」。
江戸の「大酒呑み」たちの、まさに豪快な呑みっぷりを記した短編集である。
そこに描かれるのは、
・酒宴のセッティングに恐るべき執念を燃やし、前代未聞、最上級の大酒樽まで作ってしまった男。
・「アルコール」などという概念がない当時に、独自に「酔速度」なる基準を考案し、活躍した利き酒師。
・「酒の道」を極めることで武士道精神を極め名を上げた下級武士。
・大酒合戦で一斗九升五合を呑み干した男。
・密造酒(濁酒)作りに使命を燃やし、大成功を遂げた男。
・新酒一番入荷を競う番船競争を制した、大酒呑みの船頭。
等々……。
呑んで呑んで呑みまくる、「酔っぱらい達の伝説」が軽妙洒脱に語られる。酒の香りが、口当たりが、喉ごしが、胃腑に染み渡るあの感覚が、見事な筆致で描かれる。酒好きにはたまらない作品。しかも、出てくる酔っぱらいたちが、実に気持ちいい。まさに、「蟒」かというほど豪快に呑みながら、他人に迷惑をかけるどころか、感動すら与えてしまう「酒豪」たち。魅力的である。こういう酔っぱらいになりたい(そもそも、そんなに酒は呑めないけれど(笑))。
読んでるうちに、自分が酒樽の中にいるんじゃないだろうか、という感覚に陥る、酔っぱらい必読の書。
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