Mogwai / Come on die young
音楽が情景とあまりにもシンクロしてしまったとき、気持ちよすぎて恐くなったりするものなのか、ということを僕はこのアルバムではじめて知った。99年、モグワイの『カム・オン・ダイ・ヤング』これは僕にとって恐怖の傑作だ。
モグワイの結成は95年、ステュワート・ブレイスウェイト(G)とドミニック・エイチソン(B)の2人が音楽性に共感し、その後マーティン・ブルック(Dr)とジョン・カミングス(G)を迎え、活動を開始した。96年~97年に、シングル、コンピ、シングル、EP、と連続で作品発表し、コア音楽マニアから大絶賛を受ける。そして97年10月には、初のフルエンスアルバム『ヤング・チーム』を発表。英音楽誌『NME』で年間ベストアルバム7位に選ばれるという栄冠に輝き、デビューアルバムにしてその才能を認められた。
彼らの音楽はポスト・ロックと呼ばれ、現在盛り上がっているシカゴ・アンダーグラウンドに並び評される勢力、グラスゴー・ムーブメントの中核にあたる。彼らの音楽性にあるのはその浮遊感、そして、計算されつくされたようで、そうではないかもしれないという曖昧さ(これは松下電器が発見したファジー理論に実に似ている)、それは自然と全ての事象と溶けていってやがて、なんらかの同化現象をもたらす。それを、映画でいうサウンドトラックのようなものだと評する人もいれば、ヒーリング(癒し)の音楽だと呼ぶ人もいる。しかし、どれも当たっているようで、その全てを説明してはいない。ともかく、音楽がそこに存在していることは間違いないのだが。
今をときめく、デイヴ・フリッドマンをプロデュースに作られた『カム・オン・ダイ・ヤング』は1stの理論を突き詰め、新たな息吹を盛り込まれたアルバムであり、1stよりも癖がない。つまり、より彼らの同化現象が増す音楽として位置付けられることができるだろう。冒頭に説明したとおり、僕はその心地よさに混乱と狂気を憶え、恐くなった。それは、あまりにも幸せな状況になったとき、ふと恐さを感じてしまうということに似ている。物理学では、無秩序から秩序を生み出すことを自己組織化と呼ぶが、彼らの音楽はそれに近い。法則性がないのに、なんらかの法則性が働きだしているのである。言い方を代えるとすれば、カオス原理ともいえる。ともかく、不思議な音楽であり、最高にイカしている。アルバム後半はさらに曲間でさえ曖昧になり、もはやなにがなんだかわからないような印象を受けるが、実は、音楽のダイナミズムがこのあたりに集約されて製作いるのも興味深い。
01年には『ロック・アクション』という変革をもたらしたモグワイ。音楽の持つ無限の可能性をいまさらながら確認させてくれる、実に恐ろしいバンドなのだ。ともかく1度その音楽を耳にしてあなた自身の感想を述べてみてはいかがだろうか?きっと僕とは全く違った感想を持つはずだから。でもそれはきっと正解なのだと思う。僕の評が正解の一部であるように、きっとそれも正解なのだ。
-幸せすぎてふと恐くなったとき、僕は歓喜とともに涙がこぼれた。とすれば、悲しみの果てには、笑顔が存在するのかもしれない。
時に、音楽は人を詩人にさせる。
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