カナリア
地下鉄で大量殺人事件を起こしたカルト集団「ニルヴァーナ」に、母・妹とともに在籍していた12歳の少年、岩瀬光一。
カルト崩壊後、関西の児童相談所に預けられていたが、反抗的な態度を崩さないため、祖父は幼い妹の朝子だけを引き取っていく。
家族を取り戻したい一心で、光一は児相を脱走。偶然助けた少女・由希とともに、妹のいる東京へと走り出す。ポケットには鋭く磨いだマイナスドライバーをねじこんで…。
95年、地下鉄サリン事件後のサティアンへ強制捜査に入った警官隊が先頭に掲げていた、鳥かごの中のカナリア。あれから10年を迎えようとする今、映画『カナリア』は現代の日本が生んだ魂の孤児たちが「今を生きていく」姿を追いかけてゆく。
------------------------------------
映画としては、すごくいい映画だったな、と思う。
ただ漫然と日常を綴っていくのではなく、重い主題に挑戦する姿勢は素晴らしいと思うし、ノンフィクション的なカメラまわしも好き。
出演者の魅力・演技力とも申し分は無いし、まあ、観て損はないと思いますよ。うん。
でも観終わった後「なーんか違うんだよ、なー…」という、モヤモヤした感じがつきまとってどうしようもなかった。
このモヤモヤ感の正体は、パンフレットに載っている監督のコメントを読んでようやくわかった。
1961年生まれの塩田明彦監督は、「カナリア」パンフレットの中で、地下鉄サリン事件について以下のように述べている。
>事件は私にとって初めての同時代的な事件だった。
>事と次第によっては私はあちら側の人間でありえた。
つまり塩田監督は、自分の同年代の人間が中心となって引き起こした凶悪事件に動揺し、また「もしかしたら自分もオウムだったかもしれない」とあやうい共感を感じ、故に自分たちの世代が引き起こした事態について責任をとる意味合いでこの「カナリア」という映画を撮ったのだね。
しかして、
>事と次第によっては私はあちら側の人間でありえた。
というこの一文が、私にはどーしてもわからんのである。
日本語の意味合いとしてはわかるよ。でも、感覚として理解できない。
何がどう転んだって、私はオウムに入信するヤツの気持ちが理解できないからである。
だって…キモいやん。男はキモオタしかおらんし、女ブスばっかりやし。
オウムの一連の事件にしたって、「うっわーオタクが集まってアホやっとるー!キモー!!」以上の感想を、私は持ち得ない。
でも塩田監督は、ある意味「自分の仲間が起こした犯罪」としてオウム事件を捉えている訳でしょ。事件に対するスタンスが、全く違うんですよね。得てして同情的、というか…その辺が相容れないモヤモヤ感を生んでいるのだと思います。
西島秀俊や甲田益也子が演じる信者たちは、皆純粋ですよね。
純粋に「ニルヴァーナ」の教義にほれ込んで入信し、純粋に課せられた修行を完遂しようとする(西島は脱退しますが)。
でも、森達也の「A」や村上の「アンダーグラウンド2」なんかを読むと、そんな純粋な人オウムには居なかったんじゃないかと思わされるんですよ。
勿論「カナリア」はフィクションだし、信者全員を「純粋まっすぐ君」にしといたほうが話がすすめやすいのでしょうけど、でも「純粋で傷つきやすいが故のカルト信者」として描くのは…どうなんでしょうか?私は少々鼻白み気味なのですが。
「純粋」に関して言えば、「子ども」に対するスタンスもまた同じ事が言える訳で。
ラスト、ラストのあれは、う~ん…。「子ども」に期待しすぎなんじゃないですかね。
生きてくってのは、純粋であることとイコールでは無いよ。気に入らない年長者とうまくやってく、危ないことには関わらない、そういうことも全部含めて「生きてく」スキルでしょう?
でも、この映画に出てくる子どもたちはそうしたスキルを身に付けないまま終わってしまう。ちょっとした共同体幻想みたいなのを提示して。
これってものすごくオウム的な発想だと思うのです。現実を見ない、純粋至上主義。
40歳過ぎた大人が、カルト教団を取材して映画を撮り、最終的に見出した答えがこれ、というのは、大変キモチ悪い印象を受けます。
更に言うと、「おっさんら許されたいんか?」と。
子どもに許して欲しいんですかね。サブカルチャーの犯した罪を。
でも、許して欲しいんなら自分から先に謝れよ、と私は思う。
映画の中で、西島秀俊が「自分が自分でしかないことから逃げるな!」とか偉そうな説教をするシーンがあるが、その科白そっくりそのままお返しするぜ西島!(イヤ西島秀俊が悪いわけじゃないんですけど)
ていうか、「ニルヴァーナ」の人たちが光一に謝るシーンって無いんですよね。本当ならまず一番に謝るべきでしょ。「間違った世界観を植え付けて悪かった。自分たちが間違っていた。ごめんなさい」って。私が監督だったら、絶対そういうシーンを入れるなあ…。
誰も謝らないのに、光一は許してくれる。随分都合のいい話だと思いますね。
…ってグダグダ書きましたが、要するに「オウムについてどう思うか」っていう問題提起には最適な作品だっていうことです。
この映画を観て「素晴らしい!感動した!」って思うか、「はぁ?」って思うか、いろんな意見が出ると思います。少なくとも、観っぱなしでは終わらない映画です。
他にもいろんな人の感想をききたいです!
このキーワードはコレクションに選ばれています(1)
- メイン
- コメント(2)
- つながり(9)
- トラックバック(0)
つながりキーワード (9)
谷村美月
- (momo85)
U-21女優が注目を集める昨今、 さらにその下の世代も要注目です! その中でも一番気になる谷村美月ちゃん。 1990年生まれの16歳、 最近は「わたしたちの教科書」や「1...
りょう
- (三太夫)
「りょう」という名の通り清涼感のある女性。汗かかなさそう。 掃除洗濯をする姿が思い浮かばない,生活感の全くない彼女ですが,和食が好きだったり。スチールではクールな表情が多...
「放送禁止歌」というドキュメンタリーを撮り、深夜枠ながらもそれをフジテレビで、こともあろうに「放送禁止」の歌を流してしまったフリーのテレビ・ディレクター「森達也(http...
害虫
- (椿子)
3番目に好きな邦画。 レンタル屋で、パッケージに惹かれて借りて。で、それから2回ほど借りました。面白かった。 私は、こういうちょっとわからない邦画が好きです。少女が主...
月光の囁き
- (椿子)
邦画の中で2番目に好きな映画。 私の中でこういう恋愛は、考えてなかったのだけど、ちゃんと付き合っても満たされるのじゃないかと思ったのだけど。 でもこういう恋愛もアリなのじ...
DISTANCE
- (すーじー)
あるカルト教団が起こした無差別殺人事件から3年。教団の手で殺害された実行犯たちの供養のため、山間の湖畔に集まった遺族4人が、当時実行犯たちの潜伏していたロッジで<過去>と...
約束された場所で
- (半無人)
村上春樹著。文春文庫。 オウム信者へのインタビューと、ユング派の心理学者河合隼雄との対談。サブタイトルは「underground2」。サリン事件の被害者へのインタビュ...
コンセント
- (nigatsu)
アパートの一室で、たった独りで餓死した兄。 なぜ彼はひきこもり、生きることを止めたのか? 残された部屋には、コンセントに繋がれたままの掃除機があった。 兄の葬儀...
カナリア
- (arex)
渋谷アミューズCQNで観た。ZAZAEN BOYSのエンディング曲が終わってもグッときていただけにすぐ帰りたくはなかった。その分、隣の友達と必然的に感想を言い合わなければ...





月光の囁き
「A」―マスコミが報...
映画「ただ、君を愛し...
リンダリンダリンダ

