ITOKI, VERTEBRA CHAIR designed by Emilio Ambasz
バーテブラチェア GoodDesign賞 定番オフィスチェア お薦め!
■イトーキ・バーテブラチェアは、四半世紀前に開発された世界的なベストセラーOA椅子だ。アルゼンチン生まれのニューヨーカー、Emilio Ambasz(1943-)の37歳の作品。1981年販売開始を皮切りに、1982年グッドデザイン賞、1996年に累計150万脚でロングライフデザイン賞を受賞。
■vertebra(脊椎)の名前の通り、背もたれに寄りかかると座面が前方スライドするシンクロロッキング機構が特徴。加えて、前傾すると座も前方傾斜して、大腿部の圧迫を軽減する。ただし、背にもたれかかる形の一般事務用と背が直立に近いOA作業用の2種があるが、我が家のは前者である。そのため、キーボード作業で背中が直立したときには、背中と椅子の間に空間ができてしまい、椅子は身体をホールドできなくなってしまう。また、固定肘なので、机と合わせた高さの調整はできない。
■アーロンチェアやリープチェアなどを高級機種(10万円超)、大型量販店でも展示される1-3万円台の椅子を廉価機種とするなら、バーテブラは中級機種に属する。他に、KOKUYO AGATA/SやGiroflex33、Steelcase Sensor、Herman Miller Equa2などもこれに属する。中高年層や腰痛や痔に悩む人にも、このクラスなら勧められる。定価10万円弱、実売4-6万円、中古1-3万円で、庶民にも手が届く。
■デスクワークを仕事にする人ですら、職場・家庭で与えられた椅子を、「こういうものだ」と疑問なく使ってきたことが多いのではないか。私も、自分で新品購入したのではないバーテブラを、何も意識せずに使っていた。しかし、とりあえず専門店に行って複数の椅子を代わる代わる試してみると、同じOAチェアといってもまったく別物のような違いがあると発見した。OAチェアは他の椅子と異なり、気分的な「座り心地」や「印象」だけではなく、長時間作業を支える「機能」が重要だからだ。
■たとえば、電器大型量販店で展示されるのは、ELECOM、LOAS、SIGMA、REMEXなどの1-3万円の廉価品が主流だ。多くの職場で与えられるのもこのクラスだろう。新しいモデルには、メッシュ、ヘッドレスト、アンバーサポート、革張などの派手な外見も多い。しかし、店頭で調整レバーをいじりながら(重要!)、実際に座って比較してみると、手前味噌ではないが、我が家の色褪せたバーテブラチェアが、意外に基本のしっかりした椅子であると再認識した。
■文句なしの高級チェアを即金購入できるなら、黙っていても諸機能は保証されており、細かいことを考える必要もないだろう。しかし、中級チェア以下の選択では、自分自身で基本動作を吟味する眼が重要だ。実は、5万円以下の椅子でも、10万円級ほど至れり尽くせりでないにせよ、その基本機能を一通り揃える逸品は存在するからだ。基本を押さえた中級チェアなら、それ以上の過剰機能は日常作業に必ずしも必要ないとも言える。
■中級チェアの逸品を探すには、4つの基本要素を確認することが重要だと思う。
■第1に、大きな違いがあるのは、身体の動きに対する椅子の反応だ。滑らかなリクライニングに気を取られがちであるが、長く座って作業する者には、フニャフニャとバネのように動き続けるのでは困る。各角度でキチッと止まり、身体を支えてくれることが重要だ。この点で多くの廉価機種が落第する。他方、アーロンチェアのような宙を浮く感覚とは比較できないものの、バーテブラチェアは合格だ。同じ中級機種では、Giroflex33がひとつ図抜けていた。
■第2に、同じパソコン作業でも、ネットサーフィング中は背に体重をかけたくつろいだ姿勢になるが、自分で打ち込んでいるときは直立姿勢になる。完全なリクライニングは、背伸びやDBD鑑賞のときくらいなので、むしろ直立/前傾姿勢のときに、背が身体をホールドし、座面も前傾することが大切だ。これを満たす廉価機種は少なく、OAチェア選別の分岐点になる。Giroflex 33は大丈夫だが、バーテブラ・一般事務用すら背の角度では合格点をあげられない。
■第3に、サイズも無視できない。Steelcase Sensor ChairやHerman Miller Equa2などにも注目しているが、これらの米国設計チェアは、幅576x奥535x高710-810mmとのバーテブラと比べ、幅だけでも10-20cmも大きい。肘をかけるのにも腕1本分脇を広げる必要があり、全体の大きさとしても日本の狭い両袖机に合わない。店頭でアーロンチェアに座ったところ、CサイズはおろかBサイズすら自分には大きすぎて、せっかくのエルゴノミクスが台無しだ。事実、Herman MillerもSteelcaseも、Aeron Chair Posture Fit Aサイズ、Leep Chair HDというアジア人用に小さくした新型を作っている。現在、割引・中古販売されているのは巨大な旧型が多いようだが、小柄な人には中級国産品の方がずっと良いと思う。海外高級ブランドが「自分にとって」良いとは限らない典型だ。
■第4に、体格や姿勢に合わせた調整だ。アンバーサポートは、背中の伸びを支えてくれて気持ち良いが、長く使うのにピッタリの位置・形か不安が残る。調整できると安心だ。また最近の機種は、廉価品ですらパソコン時代に対応して、肘の高さをキーボードの位置に合わせるよう調整できるものが多い。固定肘は時代遅れになりつつある。
■やや色褪せた今のバーテブラ・一般事務用を買い換えることがあるとしたら、次の条件を考慮するだろう。これらの条件を満たせないならバーテブラと取り替える価値はないし、逆にすべて満たせる椅子があるなら、アーロンチェア等は必要ない。
■バーテブラにある機能
(1)作業時からリクライニング時までの複数の角度で、身体を固定してホールドする。作業はゆり椅子ではできない。
(2)背伸び・前傾などの姿勢変化に合わせて背と座が連動スライドする。ホールド感と柔軟性の両立。
(3)総幅600-700mm程度の日本人規格。Herman MillerやSteelcaseの米国規格は、日本人の体型や両袖机に大きすぎる。
(4)布張り。豪華そうな皮革・合成皮革は、蒸れるので長時間利用に不適。
(5)中古でも構わないが、運搬費込みで3-4万円以内。
■バーテブラ・一般事務用にない機能
(6)キーボード作業時の直立した背中を支えてくれる。できればその位置・形状が調整可能。
(7)キーボードの高さに合わせ、肘の高さが調整可能。
(8)いかにも事務機器と感じさせないデザイン性。可能ならハイバック、メッシュ、ヘッドレストなども。
■具体的な候補例としては、第1に、背の形状を調節できるKOKUYOのAGATA/S(定価8万、実売6万円、中古3万円)。2004年グッドデザイン賞の上位機種アガタ/Aと下位機種アガタ/Dの中間モデルだが、必要十分。屈曲部のL字フレーム型メカニズムは、提携先のドイツWilkhan FS/Modus(グッドデザイン賞)を引き継いだ感があり、リビングにも合いそうな都会的デザイン。調整肘付モデルもある。
■第2に、背を上下調節できるGiroflex G33(固定肘、定価5万円、実売3.2万円)。屈曲部のL字メカニズムは、直立姿勢から滑らかにリクライニングしながら、あらゆる角度でピタッと止まり身体をホールドする。1994年グッドデザイン賞・金賞。PlusとのコラボレーションによるGarage Edition(53,865円)はさらに、肘と脚の塗装の高質感が増す。が、金属管の骨格を露出したデザインは、(個人的な好みでは)やや格調に欠けるように感じる。また、肘も金属管なので上下調整できない。
■番外編としては、前述の選択条件を覆すようだが、Antonio CitterioデザインのVitra T-Chairは、デザインの魅力を否定できない。シンクロロッキング機能がないのがOAチェアとして致命的だが、肘調整はできる。オフィスでも使用例があるらしく、定価10万円の3分の1の中古品がたまに出る。G-Mark以上に権威あるデザインチェアの老舗なのに、なぜか日本の1996年G-Markを取っているが、日本メーカーとライセンス契約があったのかもしれない。
■さらに、屋外でスタッキングできるような安価なプラスチック・チェアに掘り出し物があった。PLUSのGarageシリーズのJS Chair(定価1万円)だ。目下、多くの量販店やデパートの事務機器コーナーでキャンペーン展示されている。外見は、7,500円のUmbraのOH Chair(Paul Eppデザイン、1999年IDEA賞)を真似た感じで、プラスチック素材のしなりも堅く、第一印象は決して良くない。が、期待せずに座ってみると、腰を固定して全身を包む意外なホールド感に、びっくりした。あの形と素材でこそこのフィット感だと見直した。優美な曲線に憧れていたTom Vak(Ron Arad、Vitra、2.6万円)が、座ってみると意外に金属ベンチのように硬く、脇がスカスカして失望したのと対象的だ。Panton Chair(Verner Panton、Vitra、2.4万円)すら、フィット感のみでは敵わないかもしれない(デザインでは至高の存在だが)。身長・体型の相性も大きいはずだが、実際に長く使用する人の感想を聞きたい。
■バーテブラチェア
デザインD、機能B、革新性B。
Vertebra Chair(共栄学園短期大学、画像とも)
http://library.kyoei.ac.jp/isu/...
KOKUYO AGATA/S
http://www.kokuyo.co.jp/furniture/...
Giroflex 33
http://www.giroflex.co.jp/products/...
Giroflex 33 Garage Edition
http://garage.plus.co.jp/product/...
umbra OH Chair (Paul Epp)
http://entrex88.rsjp.net/umbra/...
Garage JS Chair
http://garage.plus.co.jp/product/...
Tom Vak (Ron Arad, Vitra)
Panton Chair (Verner Panton, Vitra)
http://www.vitra.com/
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コメント (6)
最新コメント5件
2005/05/10
テリー Herman MillerよりItokiの方が有名だった?頃の資料は貴重ですが、今やItoki最高峰のLevinoを知らない人も、Aeronは知ってますよね。「最高品の3割以下の価格で8割以上の満足」を理想にBーC級の逸品を掘り出すのが主義ですが、Aeronについては未だ見つかりません。
雲衣。 確かにアーロンが日本で発売された1994年でもhermanmillerを知る人はまだ一部の家具好き、デザイン好きでした。一般的になったのはその後の「ミドセンチュリー」ブームからでしょうか。今思えば隔世の感があります。
2005/11/12
20watt 仕事用にと中級機のデスク椅子を探していたので勉強になりました。詳しい説明ありがとう御座います。
2005/11/13
テリー 個人ごとの「座り方の癖」との相性も大切です。その意味で、購入前に自分で座って比較し、購入も定価1/3の中古品から始めるのが賢いと思います。たとえば、職場で使うアガタ/A(高機能チェア)は、だらしなく姿勢を崩すのには、実は不向きです。逆に、自宅のバーテブラは、シンプルな構造だけに、胡坐をかいたり、出鱈目な斜め座りをしても、意外な安定感があります。
20watt (笑)まだ、大塚家具しか見ていないので、中古家具屋もチェックしてみます。仕事用と考えると長時間座るので真剣。ご指南有難う。感謝。
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