レモン・ジェリー / ロスト・ホライズン
Lemon Jelly / Lost Horizons
「宇宙の果てのカクテル・バーでプレイされる音楽」(『タイム誌』)
レモン・ジェリーの平和でいて博愛な音楽は薄煙の立ち込めるクラブをまるごと掃除機で吸い取り、窓を開け、あたり一面に新たな風を入れたようなイメージを連想させる。それは、ただただ無機質に接触を嫌いながら沈んでいった90年代のダウナーなDJカルチャーを吸収しながら、自らのアイデンティティを決して失わずメインストリームに流れるポップ・ミュージックを新たに作り上げたという功績からくる。
Nice Weather For Ducks(#06)のディズニーランド風な音楽に代表されるように、彼らの音楽には郷愁と憂愁の美が漂う。その大前提にある圧巻のテクニックはメンバーのニック・フラングリンがゲームやTVの音楽を手がけてきた人間で、フレッド・ディーキンがクラブDJとして活躍していた人間という、双方「プロ」だったことにある(デヴューシングル「The Bath EP」からして音の完成度は完璧だった)。が『ロスト・ホライズン』が素晴らしいのは、テクニックよりむしろ持てるアイデアを究極に突き詰めたユートピア創造であったことで、その出来上がった景色に僕らはとてつもない夢を見てしまったのだ。
元々僕が彼らを知ったのは仕事でピーター・ファウラー(スーパー・ファーリー・アニマルズのジャケットデザイナーで知られる)氏と日本でTシャツをリリースすることになったとき、彼がAirsideというデザイン会社に所属していたことにある。そこのオーナーが前述のレモン・ジェリーメンバーフレッド・ディーキンその人であり、WEBページにある彼のデザインワークスに僕は心底震えた。「この人が作る音楽とは…」クリップストリーミングをクリックするのにさほど時間はかからなかった。そして、僕はスペーシーなその音楽と映像に完全に虜となった。そう、彼らの音楽で忘れてはならないのが、アートデザインワークスという部分。フレッド・ディーキン自身が全てを手がけるため、音とのシンクロ現象が著しく高い。純粋でいて甘くビビッドという色彩感覚はレモン・ジェリーの音楽そのものなのだ。
キーボードとドラム・プログラミングそして絶妙なサンプリング、はじめて万華鏡を覗きこんだ子供のように、くるくるとめまぐるしく変わっていく素敵なファンタジーの世界をこの1枚でまずは堪能してもらいたい。
きっとダンス・フロアが楽しく戯れる子供の溢れるテーマパークへと変わることだろう。
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