テヅカオサム「ブッダ」
手塚治虫「ブッダ」
「火の鳥」と並ぶ手塚治虫の大長編。仏教の開祖,ブッダの史伝という形をとってはいるが,フィクションも多々混じっている。
史伝といってもエンターテイメント性も高い。冒険と活劇に満ちているし,ジョークも随所にちりばめられてる。
テーマはまさに「火の鳥」の裏返し。「火の鳥」で仏教は悪の代表のように扱われていたが,「ブッダ」で描かれる何段階かの悟りに至るまでの道のりは,まさしく「火の鳥」の教え---汎神論的生命観と呼べるか---に至るまでの道である。
特に前半,ブッダが苦行を終えるあたりまでがとてもよい。後半,ブッダが有名になって弟子の集団ができてくるころになると,手塚当人も言うように物語が散漫になっている。また,教団化をブッダが拒むあたり,「火の鳥」での「宗教が政治とくっつくと最悪」という小テーマとも一貫していて,興味深い。
今回通読して,いくつか気づいたこと。
手塚にとってのブッダは医者でもあること。何度か奇跡的な治療(ただしそれなりに根拠のある治療法で,カビを集めて炎症を押さえたり輸血したりもしている)をし,心の病気を対話を通じて治し,どうしようもないときには3年間触れ続けたりするなど。→「きりひと賛歌」へ。
ありとあらゆるパターンの「死」が出てくる。とにかく死に様を描いた挿話が多く,登場人物のほとんどが死んでいってしまう。手塚は死にとりつかれていたといってもいいような気がする。「ブッダ」にせよ「火の鳥」にせよ,最終的には死後に生命エネルギーのようなものの満ちた世界に帰っていく→別の生き物へ輪廻する,という世界観に満ちている。現世に対するニヒリスティックな視点と,生命への尊厳が同時に存在。それが現代の人格に凝縮された人物が,ブラックジャックということなのだろうか。。。
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コメント (5)
2002/04/04
nomone ダイバダッタの死に様が、何とも空しくて思わず空を見上げちゃいます。
ぬほりん すごく影響受けた漫画です。
おが 手塚治虫らしく、タッタみたいな狂言回しが登場して、わかりやすくゴータマさんの生涯を描いていますよね。
佐藤小太郎 いやほんと,手塚治虫のおかげで勉強になることって多いです。「奇子」(これも謎めいた作品だ。。。)で日本戦後史とか。
2002/06/21
佐藤小太郎 仏教は「等身大」の宗教という感じがします。「神」をもちださないところが。人間の視線で悩みから解放されるにはどうしたらいいのか,考え抜いてると思います。僕は具体的教団の信者ではないけど,外国に行くと「ブッディスト」ですと自己紹介します。気持ち的にしっくりくるから。
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