森川久美
ヨーロッパを舞台にした華麗な歴史物や魔都上海を舞台に各国の特務機関が暗躍する「南京路に花吹雪」で知られている少女漫画家。かつて全盛期だった頃のLaLaの歴史コスチュームプレイ物の女王だったといっても過言ではない。
今は正直昔と比べて画線が太くなり、絵柄が変わってしまいあまり興味のない漫画家なのだが、今歌舞伎座で上演中のシェイクスピアの「十二夜」をこの人が漫画化しているのを思い出してキーワード化。
この人の代表作は一般的には「南京ロード」だとは思うのだけれど、私はなんと言ってもルネッサンス期のイタリアのヴェネツィアで女宰相が活躍するヴァレンチーノシリーズがお気に入り。コスチューム、装飾品、町並みなど、この人は小道具や背景でその時代の雰囲気をそれらしく描き出すのが抜群にうまい。例えば、19世紀のパリを舞台にするなら、ブルジョワの邸宅の書斎の片隅にエミール・ガレのランプを持ってくるとか、秘密の逢引の場として辻馬車を持ってくるとかそういったセンス。逆に言えば、舞台先行型の作家なのである。要するに、先に物語があるのではなく、自分が描きたい舞台設定に合わせて物語を作ってしまうようなタイプの漫画家だ。
あとこの人の初期の作品には、マラルメの言葉を借りれば、色褪せていくものの美,生き生きとした生命を徐々に失っていくものの美、凋落するものの持つ美がある。たぶん関係ないのだが、この人の「ヴェネツィア風琴」という短編を読むと、マラルメがロンドンに留学している時期窓辺の手回しオルガン弾きの音色から妹の死を思い出してしみじみとする「バルバリア風琴」という散文詩をつい思い出してしまう。
そういえば、この人は金沢出身だが、他に金沢の漫画家には波津彬子や坂田靖子がいる。金沢出身の少女漫画家にはうまくいえないのだが、雰囲気を描き出すのに巧みというか、独特のエコールを形成しているように感じられる。
- メイン
- コメント(6)
- つながり(8)
- トラックバック(0)
コメント (6)
最新コメント5件
2005/07/23
Shimo. オンタイムで読んでました。「らぶり」の人は個性が強いけど、なにか共通した空気を持ってますね。
Rume 私はさすがにリアルタイムでは読んでなくて、確か「読書の快楽」という本で浅田彰の紹介を読んで古本を集め始めました。「らぶり」は、先日年上の友人と坂田靖子について話していたとき会話に出てきて知りました。 >芋ようかん 関西方面には支店がないと聞いていましたが、今でもでしょうか?
祥 支店はなかったように思いますが、売っているところはあった筈。さすがに一般的じゃないですね。大阪で普通にあるものが東京ではなかったり、逆もあるし狭い日本でもいろいろ違うもんですね。その方が断然、面白いですけど。
Rume 売ってるんですね。帰省する山口の友人に売っていないからと舟和の芋ようかんを勧めたら、実家で不評だったそうです。で、話を思いっきりずらしてしまったけれど、一時期の森川久美の小道具のもってきかたとか、趣味には相当あこがれました。「南京路」あたりはちょっと苦手なんですが。
祥 舟和の芋羊羹、私の周りでは好評なのに。 森川久美、実はもうあまり細かい記憶はないんですが初期の作品が好きです。と云いますか、線が太くなり始めた辺りから読んでいませんから初期のみ知っているだけで。確かにキャラクター以上に設定に力を入れて、情景や場の空気感を描くのが実に巧い人でしたね。或る物語に出てくる、「後生だから俺に惚れないでくれ」というセリフを今でも洒落で使ったりします。
- すべてのコメント »
つながりキーワード (8)
懐かしの少女漫画特集☆
- (yamayuri)
【宝石箱】の話からなぜか昔の少女漫画の話になりまして、そこからKW化することに…。期待に応えられるか分からないけど書きますね…(笑) 一世を風靡したピンクレディー…そし...
月刊LALA
- (きなり)
月刊LALA。私にとっては、ものすごく懐かしい響きの雑誌です。今もありますが、私にとってのLALAは、もう20年も前のLALAなんです。 その後の価値観をひとつ作ったというくらい影響がありま...
今 市子
- (きぬ)
漫画家。「百鬼夜行抄」妖魔と共存する飯島家の愉快でちょっぴり怖い日々を描いた話…が代表作かも 「大人の問題」からこの人を知ったのでてっきり男子恋愛系の人かと思って・・・でもどうも違うなぁ。と...
坂田靖子
- (ラクミ)
いままで買った漫画で一番読み返す回数が激しいのがこの方です。やっぱり金沢の水に引かれてしまうせいでしょうか…。 きっかけは前出の吉野朔実氏のコメント。「少年は~」のあとが...
塩野七生
- (カナナ)
その昔本屋で働いていたワタクシは書籍の背表紙だけ見て歴史ものが多い事も手伝って「しおのしちせい」と読み、男性だとばかり思っておりました。 塩野さんごめんなさい。 書籍を拝見してからすっかり...
波津彬子
- (きぬ)
漫画家。「雨柳堂夢咄」が代表作になるのか。明治、大正?そんな頃など見たこともないがこの人の本にはリアルにしかも色気たっぷりに描かれている。和もの好きにはたまらない♪ほとんどの人が和装、洋装の...
李賀
- (雅亮)
「長安に男児有り 二十にして心既に朽ちたり」 ではじまる「贈陳商」が有名な唐の詩人。 李賀、字は長吉。791年~817年。 本邦でも室町時代に「生き過ぎたりや 二十八」とかいふやうな俗謡...
バジル氏の優雅な生活
- (Rume)
ヴィクトリア朝のイギリスを舞台に、有閑貴族 でプレイボーイのバジル・ウォーレン卿とその 周囲の人々を描いた連作短編集。 バジル氏の従僕ルイを狂言回しに貴族階級の人々 だけでなく、市井の...




懐かしの少女漫画特集...

