アンドロイドハデンキヒツジノユメヲミルカ?
アンドロイドは電気羊の夢を見るか?/ P・K・ディック
【アンディとイジドアとempathy box】
「・・・七色のパジャマ姿で
ベットから出て大きく伸びをした。」
んん〜冒頭いきなり七色パジャマで登場のデッカード。
ご存知,映画ブレード・ランナーの原作でありんすが,
映画とはちがいやたら生活感が漂っています。
舞台は第3次世界大戦後,
死の灰の降り積もるサン・フランシスコ。
人類の多数は地球外へ移住(おもに火星)。
残留者は半ば棺おけに足をつっこんだようにして
肩を寄せ合あって暮らしています。
異星開発のため,兵器だった戦闘アンドロイドは,
人間の労働力として,よきパートナーに一変。
ところが際限なく高度に開発を繰り返すなか
アンドロイドは自分の人生を夢見て
火星から地球へと逃亡をくりかえすように
なります。
さて,主人公リック・デッカードは
そのアンドロイド(以後,アンディ)を狩る
バウンティハンターなのですが,
どちらかというとモーは,
アンディに”孤独”という共感をもった,
第2の主人公であるピンボケの【イジドア】
の方に惹かれました。
イジドアは脳なし種なしの御墨付き。
そのおかげで火星にも行けず,疎外され,
一人さみしく郊外に暮らしています。
原作では人間とアンディーを区別する違いとして
【Empathy(エンパシー)】共感・感情移入
という一つの能力をとりあげています。
Empathyは物語の中で重要な位置をしめ,
empathyに関する物語上のオリジナル機器が
いくつか登場します。
そして,これに相対するように
たくさんの”孤独”が表現されています。
この言葉に初めて触れたのは
スタージョンの『夢見る宝石』(1950著)でした。
ここではちょっと特殊能力的な用い方が
されていましたが,本編では人間とアンディの間に
横たわる人間なら誰もがそなわっている
普通の力です。
映画にはでてきませんが原作には
【Empathy box】というものが登場します。
がらんとした空虚な地上で,
「ボクハココニイルヨ」
「ワタシはココヨ」
とお互いを確かめるかのように
人々はboxの取っ手を握り,
マーサーと呼ばれる老人に融合し
果てしない山登りをつづけるのです。
empathy box は高性能の体感器で,
マーサーが石をぶつけられると
boxを使っているものも傷つきます。
それはマーサー教と呼ばれる
”共感”というカルトにまで発展していきます。
empathy box は彼らを孤独から救い
生きるパワーをつちかう
大切な電化製品なわけです。
【Voight-Kampff Empathy Test】感情移入度測定法
このテストの方は映画でもでてきました。
VoightとKampffの二人の科学者が開発した
Voight-Kampff 機器によるエンパシーテストです。
アンディは感情移入ができません。
映画では何でこんな方法で検査するんだろう?
と不思議に思っていましたが,原作では,
アンディだけでなくイジドアをはじめとする
ごく少数の人間(精神障害者)もテストに
ひっかかってしまう設定をくんであり,
この設定が映画トータルリコールで見せたような
作者特有の実像と虚像を回転させる軸となって
話をより面白く演出してくれています。
たった4〜5年の寿命しかもたされないのに
実に高度な知能をもたされ,
故意に欠落させられた感情をもつ
あわれなアンディ・・・。
対して,人間であっても差別され,
疎外され,呪われた低い知能のため
ちょっと間違いがおこれば殺されても
しかたのないイジドア。
偽者の電気羊にノイローゼの妻,
本物の動物を手にするため
己の命をかけて人に軽蔑される
仕事しなければならないデッカード。
Empathy boxというタービンが回り,
平行するデッカードとイジドアとアンディの物語が
交錯しはじまる。
一時はアンディの中に自分を見つけ
アンディを守ろうとまで思ったイジドアも
最後にはこのboxを境に彼らと別れ,
デッカードが追ったアンディのリーダーも
boxをきっかけに殺人を行っています。
そしてデッカードはあのboxに住まう神・マーサーに
よってアンディの攻撃を予言(シンクロニシティー)され
命を救われるのです。
モー自身も『夢見る宝石』を読んでから
empathyのスイッチのONとOFFをするように
なってちょっと生きやすくなったという
経験がありますが,実際のところ
empathyという言葉や意味は知られていても,
この能力は以外に認識されていないように
モーは思います。だから,もしかすると多くの人が
作者の本当のメッセージを読み取れていない
可能性はかなり強そうです。
もち,モー自身もですが( 笑 )
作者はこの物語ではempathy能力を,
「人間社会にしかないないものらしい・・・」
としています。
モー的には作者にとってempathyとは
小説のネタである以上の何かが
あるような気がすます。
作者にとってのempathyとは?
おそらく作者ディック自身が
empathy能力によって天国と地獄を行き来
させられたのではないでしょうか?
極度の精神不安定のはてに
ドラックにまで手を染めた作者の世界観と
自身の(おそらく)強いempathy能力に
ついての苦悩から生じた疑問が
この作品の出発点だったのでは?と
思うわけです。
しかし作者を苦しめたその力が作品を生み,
そしてブレードランナーとして
映画化され脚光をあびた年に
彼は天国に召されている・・・
なんとも皮肉な話ではありませんか。
また欧米人と東洋人・・・
特に日本人との精神構造には
大きな違いがあり彼らの感じる”孤独”とは
より死に近いもので魂の消滅に繋がっていることを
書き加えておきたいと思います。
最後にこの話は1968年,
まだテレビの普及もままならない年にうまれ,
1992年の未来を描いたものですが,
2005年の現在,宇宙はまだはるかかなたで
地球はやや病み始めているものの
まだ後戻りができるかもしれないことを
天国の作者ディックに報告します。
- 2005/10/24更新
- 2005/10/23登録
- 2667クリック
「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?/ P・K・ディック」を検索
このキーワードを共有する
-
メイン
コメント (0)
まだコメントされていません。
つながりキーワード (4)
フィリップ・K・ディック
- (豆おじさん)
映画「ブレードランナー」の原作 「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」 が有名なアメリカのSF作家。 もっとも数多くの作品が 映画化されたSF作家の一人らしい。 わりと...
Android SDKで作るモバイルアプリケーション入門
- (ロドリゲス通信)
月日は進みいろいろな書籍が出ています 初めてのAndroid 初めてのGoogle Androidプログラミング サンプルで学ぶ必須作法と基本手順
ブレードランナー
- (モーブラボー)
『俺は、おまえら人間には 想像もできないものを色々見てきた。 オリオン座のそばで 炎に包まれた攻撃型宇宙船。 タンホイザーゲートの近くで、 闇の中に輝く C ビームを見た...
Voight-Kampff machine
- (モーブラボー)
Voigt-Kampff Replicant Test [小売り: ¥327,000,000 ] う~ん。 情報が少ない。 っていうか英語が読めない。 マニア向けなのか...







Android SD...
Voight-Kampff m...
ブレードランナー
フィリップ・K・ディ...


