金子光晴「どくろ杯」
人生ってものが水羊羹を匙ですくい取るような具合に簡単に割り切れるものじゃないってことは、さすがの僕も知っているけれど、これほどのごった煮のような生涯ってのはやはり珍しいんじゃないだろうか。ごった煮のような暮らしでありながら、上品で涼しげな味わいがあるとなるとなお珍しい。金子光晴の「どくろ杯」。
金子の文章の良さについては、文芸雑誌やなんかの「私の好きな作家」てな特集で折々目にし、気にはなっていたんだが、詩集はともかく散文の方は余り書店で見かける事がなく、どういう訳か手元にある中公文庫の「マレー蘭印紀行」とちくまの抜粋本もなんとなく読みそびれて.書棚の片隅に放棄してあったのである。何気なく入った書店で読むあてもなく買った「どくろ杯」。
「唇でふれる唇ほどやわらかなものはない。」
「私たちは、健康なからだと、尻のくさったくだもののような精神とをもっていた。」
こういう言い回しにつられてヨタヨタと読み進むうちに、何か手放せなくなちゃったんだよね。高校を卒業してからこっち、他人の文章を読んで力が満ちる思いをしたことは稀なんだが、びびっと来ました。
- 2002/04/17登録
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