ハイライズ
ハイ・ライズ
J.G.バラードの小説。
SFオールタイム・ベストに必ず挙げられるのは『結晶世界』ですが、これ私、うまくノれませんでした。
もっと若いときに読んだら世界が変わっていたかもしれないとは思いましたけど。
「それはニューウェーブ嫌いの典型的な反応だ!」…と、熱烈なファンの方には石を投げられそうですが。
そんな感じで、河岸を変えてと、挑戦した2冊目がこれ。
*
40階建ての高層マンションが舞台。建物内にはショッピングモールや医療施設が完備されていて、外に出ることなく、不自由なく暮らせるようになっている。
もちろん、こんなマンションに住めるのは一定の所得のある人ばかりなのだが、上階の家賃が高いため、高所得者ほど上に住んでいる。マンションの設計者は最上階のペントハウスに住んでいる。
次第に、マンションの居住階層の違いが、貧富の違い、社会階層の違いを現すようになり、各層間での対立が深刻なものになっていく…
*
「あなたっ、上の住人が今度は猫の死体を。きいいい」
「なんだとっ。今度という今度は我慢ならん」
「あなた、これ、さっき拓也が出したばかりのものよ」
「よし、こいつを撒いてきてやる。ひひひひひ」
とかなんとか。筒井康隆が書きそうだなー。
と、上のあらすじを見て思った方。そういうのとは、違いますので(笑)。
いや確かにそうなんですけど、そうじゃないっていうか、そういうことが書いてある筈なのに、なぜか、ドタバタになってないのです。
気がつくと、周りの世界が別のものになっている、というショックを、私はこの本で初めて味わいました。
主人公がそういう体験をする、ではないですよ。主人公たちは、あくまで、自分の異常性を意識することはない。
主人公を傍観している読者が、「わっ。俺は今なんというところに居るんだ」と、読書体験として、突然気がつくんです。
それも、血みどろの事件によってことの異常性が明らかになる、なんていうことではなくて、描写や章のタイトルに込められたイメージの力によって、世界が別の相の下に輝いて見え始めるのです。
これがニュー・ウェーブってやつなのかっ? カッコイー!
惚れました。
ハヤカワから復刊されていて、入手は割と簡単だと思います。
▼後記(030801):よく「この一冊が私を変えた」「この一冊で世界が変わった」などという大仰な言い方をする人がいて、そういうのなんか嘘臭ぇなぁと思っていて、そのわりに、ぼくもそういう書き方をここでしているようだが、ここでの「世界が変わる」は、もっと普遍的な、読書経験そのものが持つ異化作用のことを指している。▼
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