『ザ・サーチ-グーグルが世界を変えた』
この本は単なるビジネス書ではない。帯にもある通り、Googleが、ビジネスのルールも含めた「メディアと(記号活動としての)文化」をどう変えつつあるかを、その渦中からつかみ出し、全体像とその先を提示しようとしている。
したがって、この本に「サーチエンジン最適化」などの具体的なビジネスノウハウを期待して読んでも無駄である。でも、Googleの気まぐれに見えるサーチエンジン改変(グーグルダンス)によって、ネットビジネスの長いシッポ(Long Tail)の先っちょにいるニッチなビジネスがいかに翻弄されているかは良くわかる。ちなみに、第五章で事例として紹介された、“あの会社”は、(色んな経緯があって)今では検索キーワード「big feet」で検索結果のトップに出ることが確認できた(2006年1月現在)。
会社の設立や株式市場上場のてんやわんやのエピソードの話も、もちろん面白い。その上での感想レベルの話で申し訳ないのであるが、多分演出もあって相当謎めいた会社と思われているGoogleも、結局、西海岸geekの会社のひとつなのだなあ、ということだ。
「技術によって世界を変える」-背景に響き渡るロック音楽とともにgeekが毎度のように描くヴィジョンであり、場合によっては単なる幻想でもある。きらきらした可視化された(政治・金融・スポーツ)権力の背後で、モーロックのような技術オタクとベンチャー資本が手を組む...。
ただ、インフラと見えたものが覆されるのは、例えばマイクロソフトとGoogleの関係を見ても分かる通り、“この界隈”の常識であり、Googleを新たな所与として祭りあげる評論よりは、そのスキを突くスパム・サイトの方が逆に生産的に見えるのは、オレの根性が曲がっているせいだけかも知れない。本書は、「個人のクリックストリームを明け渡して検索精度を上げる」ことによるプライバシー面の危惧についてもキチンと言及しており、その辺についても安心して不安な気持ちになれるのは良い(笑)。
翻訳は問題がない。文系の知識は点描程度しかない(いや、専攻分野なら、なおさら素粒子レベルなのだが)理科系バリバリの私には「共有地の悲劇」といった言葉に訳注が欲しい部分もあったが、それこそ自分で「ググって」みれば済む(!)話かも知れない。IT系の言葉で若干引っかかるもの(blinkは「きらきら光る」ではなく「点滅する」だろう)も多少あったが、原語を類推すれば足りる。何しろ急いで翻訳出版してくれたことに感謝したい。
ちなみに著者は、Googleを、数多くの人々の検索に際する意志や欲望を集積させつつあるもの、として「Database of Intentions」と呼ぶ。これは翻訳では「意志あるデータベース」と訳されており、それでももちろん意図は分かる。将来、検索する人々それぞれの「その時々の意図」をAI(人工知能)によって推測して「オーガニックな検策結果」を提示するような構想も具体的に研究されており、Google自体が、単なるデータの集積から、数十億人の意図を何らかの形で「代表的に表現」するような事態もあり得るだろうから。ただ、少なくとも今はそうではないので、ここは素直に「意志のデータベース」ではないだろうか。ま、単純に趣味の問題かも知れないが。
もう1つだけ。それこそ、おせっかいではあるが、Google以前の検索技術を解説した第3章までは、記述が平板で読むのがやや苦痛かも知れない。本書を理解するには、必ずしも必要ではないので、すっとばして4章から読んでも構わないのではないかと思われます。
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最新コメント5件
2006/11/29
CLASH 「火星も買ってみせます。サーバーとか置くんでしょうか。少々暑いですが。」なんて言ってるようじゃGoogleには入れないだろな(笑)
島崎丈太 いや、そんなことよりこの画像で「ただ一人の(幸運な)人間を除いて、全部の人間を排除する」って書いてあるんですけれど・・・ もしこれが「Google製の人工知能を実現した後は人間なんて必要無かろう」ということだと、数年前から私が感じていたGoogleの最終目的にぴったり合致してますが、ぞっとしてきました。 全体の文脈の中で見ないと何とも言えないでしょうが、興味深いです。 ホワイトボード全体をダウンロードして後で全部プリントしてみようと思います。(今、マニラに出張中なので日本に戻って来週辺りに) Google社の天才エンジニアレベルでの考えでは、クラークの「地球幼年時代の終り」みたいなストーリーが想定されているんですかね?
2006/11/30
CLASH ブレストですから、何書いてあってもびっくりしませんけど(笑) というか、ブレスト段階で倫理とかポリティカリーコレクトと言った思考制限やってるようじゃ、ブレイクスルーは生まれないんじゃないでしょうか?(笑)
島崎丈太 確かに・・・ ただ、彼らの傾向としてGoogle製人工知能を創造し、「人間後」を意識したような方向性で事業を進めよう、ということだとだと何だか怖いなあ。 SF好きの下っ端としては興味津々ではあるのですが。
Fallout SFに出てくるようなAIが、まだそんなにリアルなものとは思えない現状では、とりあえずは杞憂かとは思いますが。人工知能研究者はたくさん集めてるようですけどね。
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