くるり『THE WORLD IS MINE』
「『THE WORLD IS MINE』はわずか1ミリほどの期待を無限大に膨らませる」
この世界は僕のもの。つたない直訳だが、これは「この街は僕のもの」(「街」)に対応する。「街」は「京阪電車の窓から見える」世界、固有名=個人の記憶に繋がる世界を歌っていて、その世界はもちろん個人に属する。
しかし「街」は「THE WORLD」とアルファベットに変わり、日本に限定されない世界に変わる。「次の街ならもう名前を失った」。街は固有ではなく、ニュートラルな任意の街となる。「ライブステージは世界のどこだって」。記憶からの旅立ちを試みたくるりは開かれた空間にたどり着いたのである。
音楽的にも大村達身が加わる一方で、打ち込みを積極的に取り組んだ結果、グルーヴ感溢れる仕上がりになっている。そのリズムは「アイラブユー 皆思う これだけがメロディ奏で出す」という歌詞のように一体感が出ている。ここでは自他の境界線もあいまいになってきている。あらゆる境界線が消えた瞬間、くるりの音楽だけが響いている。
ちなみにこのアルバムはシングルカットの曲を決めるためにファン投票を行っている。1位は「男の子と女の子」で、ギターで聞かせるバラードが選ばれている。ある意味くるりがこのアルバムで完成させたグルーヴ感は、ファンが求めていたものからは少しずれていたのである。さらにドラムの森信行がこのアルバム完成後脱退する。1つの完成を見たくるりはここでまた1つの終わりを迎える。
- 2006/05/02更新
- 2006/04/22登録
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