アルゴールノシロニテ
アルゴールの城にて
かのアンドレ・ブルトンをして「シュルレアリスムの帰結するところ」と言わしめた、ジュリアン・グラックの処女小説。
物語は、森ふかくにある古城、アルゴールの城を買い受けたアルベールが、休暇をすごすため城に向かうところからはじまる。
アルベールが、変わり者でかつとても魅力的なかれの親友、エルミニアンを城へ招待すると、エルミニアンはハイデという美しく聡明な女性をともなって現れる。
かくして、三人の長いヴァカンスがはじまる。
語られるのは、ハイデがアルベールに惹かれ、エルミニアンはハイデを思いつづけ、アルベールはふたりのあいだでぐらつくという、単純な三角関係かもしれない。でも、この本がありきたりでないのは、非常に特異な表現方法を用いているからだ。
それは、会話のない、迷路のような文体。執拗に積層される比喩が生む、白濁した空気。
高熱に浮かされたうわごとのような、夢とうつつをさまよう言葉の荷重で、物語はゆっくりと旋回し、悲劇へと傾いていく。
アルベールとハイデが森の遊歩道をさまようシーンや水浴のシーンでは、特に言葉のひとつひとつが美しく、いつまでも耳に反響が残るくらいに、たしかな魔力がある。
主人公のアルベールとエルミニアンの関係もまた興味深い。
冒頭、アルベールに城の購入を勧めた友人というのはおそらくエルミニアンだろう。エルミニアンがいなければ、アルベールにとって全世界の魅力は半減してしまう。これはまた逆も真なりだ。かれらは精神的双生児であり、なおかつ共犯者にして敵対者なのだ。
そういう、火花をあげるふたりのあいだに現れた女神、ハイデの運命は一体どうなるのか。
小説というよりも長大な散文詩。
このようなたぐいの本を、この値段(千円以下)で売り出す白水社の男気に最敬礼します。
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ISBN:
4560070792

商品を見る - 発売元: 白水社(白水Uブックス)
- 人名: Julien Gracq(著者)
- 安藤 元雄(翻訳)
- 原題: Au Ch^ateau d'Argol
- 2006/07/24登録
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