いとうじゃくちゅう
伊藤若冲
視界の隅々までデジタルな瞳でスキャニングしたいという欲望のカタチがある。
一時期「スーパーフラット」というキャッチフレーズで売り出された美術もその欲望の表現だった。
それをものすごく簡単に言えばアニメのように画面の隅々まで制御したいという欲望。
「曖昧さ」や「深み」を排除した世界。
ディティールに凝るのも特徴。
「見ること」は簡単でも「見つめること」は難しい。
これは詩的な意味ではない。
抽象的で心理的な意味で難しいのではなく即物的で物理的に難しい。
瞳が絶えず微細に動くことで初めて「見る」ことが可能になる。
瞳を微動だにしないよう人為的に固定すると(いやな実験だ)人間は何も見えなくなるらしい。
だから「一点を見つめる」というのは厳密には不可能な行為なのだ。
だから、その不可能に逆らおうとする「凝視」の欲望はエキセントリックにならざるを得ない。
伊藤若冲の絵にもそんなエキセントリックな欲望を感じる。
この作品をドットで描いたのも、絵から「曖昧さ」をいかに排除し隅々まで「凝視する」かという試行だろう。
デジタルな瞳の欲望がドットを選ぶのは自然なことだ。
この手法は西陣織の下図がヒントだというが、まさに
織機は情報をデジタルに変換するコンピュータのルーツでもある。
今度の展覧会ではライティングを連続的に変化させて見せる展示があるらしい。
コレクターのアメリカ人がロウソクの灯で鑑賞しているのをテレビで見たけど、自分の絵をロウソクの灯で見られたりするのを若冲は喜ぶのだろうかと少し疑問に思う。
真正面からバーンとタングステンライトで照らした方が喜ぶんじゃないだろうか。
また、裏彩色をしていることが発見されたと言うけど、気の効いた絵師なら普通にやっていた手法で、若冲の場合それは決して絵に「深み」を出すためではなく、逆に絵の具が絹地を透けることが「深み」になってしまうことを嫌い、より表面的であろうとしたからじゃないかな。
より表面的であろうとすること。
若冲は顔料もごく薄く塗っている。
若冲が再評価され始めた時期と、CGやDTPなどデジタル技術が一般に使われだした時期が重なるのは偶然ではないと思う。
- 2006/07/27登録
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